他のもの
たもつ

バス停の近くで生まれ
バスを見て育った
バスを見ていないときは
他のものを見て過ごした
見たいものも
見たくないものもあった
初めての乗り物もバスだった
お気に入りのポシェットを持って
日のあたる席の方に
母と座った
指で柔らかいところを押していた
行った先は恐らく親戚の家だった
母はおじさん、おばさんとだけ呼び
最後まで名前を呼ぶことはなかった
いくつかの嘘をついて
人の嘘をいくつか咎めた
愛という言葉が
本当にあると知った
その街にもバスは走っていた
生まれた街にあったものは
大抵あった
ないものは
他のもので足りた



自由詩 他のもの Copyright たもつ 2007-10-25 20:54:08縦
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