うへぇ
影山影司

 イイですか 良いッスか?
 超痛々しいこと言っちゃってもかまいませんか。

 僕は後三ヶ月で二十歳になります。
 二十歳になったら大人なんです。「まだまだ子供ですから」なんて言えないんです。酒が飲めて夜遅くまで遊べる代わりに、もう大人になっちゃうんです。どれだけ幼稚で馬鹿でも、もう大人になってしまうんです。

 嬉しくもあり恐ろしくもあります。

 大人になったら僕は
『この世に独りで生まれ、この世を独りで生き、この世を独りで去らねばならぬ』
 ということを
 ひねくれもせず 斜に構えもせず 腐らずに 真っ当で 純粋に あるがままに受け入れる人間になりたいんです。

 今はどうしても恐ろしいんです。
 だって世界は広いじゃないですか。宇宙は無限の広がりを保有するじゃないですか。
 僕の脚は地球ひとつ、征服できないじゃないですか。
 ねぇ、砂漠に埋没する一粒の砂になれば、孤独に耐えられるんですか。

 「いつか理解しあえる友達が出来る」だとか「私がいるから一人ぼっちじゃないよ」なんて言わないでください。余計に孤独を感じるんです。僕のために死んでから言ってください。どうせ、何か機嫌を損ねたらカンタンに離れてしまうんですから。
 お母さんとじゃ分かり合えないんです。パパでも駄目なんです。親友は話になりません。兄弟じゃ意味が無くって他人じゃ寂しいだけなんです。

 ねぇ、人は独りじゃないと、途端に腐敗してしまうじゃないですか。
 人は、独りで生きるように、出来ていると最近ようやく気がついた。

 悲しまずに受け入れたいのです。
 でも僕にはまだ無理なんです。
 大人になったら、そんな事実に耐えられるんですか。
 子供だから駄々をこねるんですか。

 畜生。今日も夜が来て、朝が夜を駆逐して昼が来て、昼を蹂躙する夜が叫ぶ。
 うあぁぁああぁ。怖いじゃないですか。
 うへぇ。


未詩・独白 うへぇ Copyright 影山影司 2007-10-23 02:07:28
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