矢印 β版
石原ユキオ

AIという類人猿が支配する町で
プレカリアートたる我々の無抵抗不服従単純労働
ここは湿り気があるから白い虫
わたしには栄養があるから白い虫がわく
クリトリスをこねる要領でひねりつぶす

日曜日のキャッシュコーナーでひねもす
無い金を出し入れする
手数料を払い
出して入れて出して入れて出すたびに手数料を払い
入れて出して入れて出して入れて出すたびに手数料を払い
「一ヶ月で5キロの減量に成功しました!」

ベルトコンベアで運ばれてくる
記号の中から不適切な因子を正確に排除し
ときにこっそりと持ち帰る
ときにこっそりと見上げる緑色の男
非常時に憧れて階段を踏み違えるような人生だった
今までも
そしてこれからも

  (先輩顔が赤いです
  (鼻から湯気が出ています

いいえ後輩
これは鼻毛です
五十年後のなけなしのわたしからのびてきた
真白き蜘蛛の糸

夢と言える程のものもないですが
敢えて言うなら
少女として一生を過ごし
世の中に害をなしたい

父はこの惑星を星型に削る工事に参加していました
人類がよりわかりやすく輝くために
切り立った崖にはりつくいもりの黒焼き
のような父を見た
遺伝的に
あるいは当然の権利として
都市部の一般的な人間が年間に浴びる約五十倍の罵詈雑言を濃縮し
わかめと呼ばれる
誇らしくグンゼの下着を露出する
出して入れて出して入れて出すたびに手数料を払い
入れて出して入れて出して入れて出すたびに手数料を払い



   矢印の通りに歩く油照り



辛酸を
舌頭に
千転せよ


俳句 矢印 β版 Copyright 石原ユキオ 2007-10-02 00:06:32
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