月下逍遥
まどろむ海月






 月の光があたりを
 照らしています



むかし海辺の寒村に
傾いた粗末な小屋があり
結婚間もない若い二人が
寝ていました
あまりに貧しくて
布団の代わりに魚網をかぶって
寄り添っているのでした

破れた板葺きから
漏れる白い光に
網の間の指を
魚のように遊ばせながら
幸せでたまらないといった感じの
夫が妻に それでも少し
声を曇らせて話しかけました
「ねえ、おまえ
 こんなに寒い冬に
 僕たちのような布団さえ持たない人は
 どんなにか辛いだろうねえ」


これ以上の貧しさなど
考えられないのにということで
笑話として伝えられているのですが




たとえばカーペンターズのカレン
幸せだったのでしょうか
才能にも名誉にも富にも恵まれ
その歌声は世界中から
愛されていたというのに
心の悩みと拒食症に苦しみ
32歳の若さで亡くなりました




幸せって何だろう

古い中国の笑話を
思い出しては月下に
逍遥している
私です












未詩・独白 月下逍遥 Copyright まどろむ海月 2007-09-24 23:58:48
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