世界の終わり
アオゾラ誤爆

パンの匂いが、する


カラスの鳴き声で割れた
やわらかい世界の殻
甘い時間をむさぼったあと
すべてが失われていくまで
もう僅か
あなたは足の指の先まで
すっかりふやけて偽物みたい
壊れた温度でわらってる
どこかで狂った犬が
なく





だらだらと続くだけの日々に
そろそろ背を向けたいのと
慣れた手つきで紅茶をいれる
悩ましいくすりゆび
くっきりと焼けた指輪のあとは
まるで切り傷

美しい模様

滲んでいく太陽の軌道を
追いかける


あなたは
さっきから窓の外ばかり
気にしてる
なんだか今日は街のいろが
すこしおかしいみたいだ
空のいろが
いつもより鮮やかに見えるんだ
そう言った焦げ茶の目が
ぐるぐると空中をさまよう

これで最後なのと告げた
私のこえすら聞こえない
そぶりで





世界の終わりはまだこない


黒々と散らばる点
羽根のない鳥たちが
急降下でゆうがたを裂く
やっと視線をしたにうつせば
ことんと軽く鈍い音
ぼんやりと視界にひそむ
少女のようにか細い腕は
やけに正確な仕草で
ベージュのほうのマグカップにだけ
真っ白な結晶を沈める

それでいい

砂糖はきみに似合わない
ぼくだけがスプーンを手に取り
ぼくだけが甘みを溶かす

それがいい








からになったピンクのカップ


あなたは猫舌だから
その紅茶を飲み干すには
まだすこし時間がいる
急かすつもりはないのだけれど
平べったい東の空に
赤い月があらわれたこと
いおうかどうか少しだけ迷っている






自由詩 世界の終わり Copyright アオゾラ誤爆 2007-09-10 20:54:49
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