歯の行方
フクロネヅミ

そういえば。
と、思い出した。

子供の頃、歯を投げたことを。
祖母に何かを願って投げろ
といわれ、"冷やし中華"と言った気がするのだが
いつ、歯の効果があったかは未だにわからない。

迷信とはそういうものだ。



二階の窓から屋根を眺めて
探したことが何度もあったが、
一度だって見つけた試しはない。
確かに屋根へ投げたのに。

となると、投げた其れは何処へ行くのか。

考えてるとなんだか、
空に浮かぶ白いものが
自分の歯のような気がしてきて。



そういえば。
と、また思い出すのである。

先日抜いた親知らずはどうしただろうと。
まさか歯医者も同じように
迷信を信じてバラバラと投げるのだろうか?

となると、夜の星が虫歯の穴にも見えるわけで。
衛生士も何か願ったのだろうか。

他人の歯だのに。



空の上が歯だらけならば、
息も出来ぬほど
口臭もひどかろうと
頭上の鳥をしかめて眺め。


私は空がとべなくてよかった。
と、


少し惜しく思うのである。


未詩・独白 歯の行方 Copyright フクロネヅミ 2007-09-10 09:17:32
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