若原光彦

世界の片隅に咲く花を
うつくしいと言うことはできない
ぼくはその花を
見たことがないのだから
その花自身は
なにも語らないのだから

あなたが
浮かんでいる雲を見て
自分にも翼がほしいと思うのはいい
それを話すのもいい
なにかに書いてもいい
絵にしてもいい
それのどこが悪いのか
あなたはまだ知らないのだから

世界中のうつくしいものを一箇所に集めたら
そこが世界で一番
うつくしくない場所になる
ねえぼくは
必死でそこへいこうとしてる
誕生日おめでとう
でもあなた
家に帰るべきじゃないかな

あなたが
子供のころを思って
遠くまできてしまった気がする
と思うのはいい
それに気づくのはいい
考えてみるのもいい
すぐに忘れてもいいし
ずっと忘れないでおこうと決めてもいい
それのどこが恥ずかしいのか
あなたが知らないでいてくれるなら

ぼくは
あなたに
世界の片隅に咲く花を贈る
あなたのために
咲いていました
ぼくにはそう見えました
名前をつけて下さい
花を拉致した
ぼくのかわりに

あなたが
その花を見たいと思うのはいい
花の香りを想像するのもいい
花瓶を探しておくのもいい
でもあなたが
自分もいきたいと言ったら
ぼくは止めるよ
そんな花はないんだって言う


未詩・独白Copyright 若原光彦 2007-08-24 01:10:45縦
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