再会
yoshi

テーブルの向こう側で

少し緊張気味に彼が笑う

あんなに長い時間を

過ごしてきた彼は

いつの間にか手の届かない存在になっていた

街角や

喫茶店に置かれたフライヤーで

彼の笑顔や

彼の横顔を見た

大事に取っておいた彼のメールアドレスは

私にとって

命綱のようなものだった


勇気さえあれば

彼に会えるかもしれない


そう思いながら

長い長い年月が過ぎた


少ないけれど

数人の人と恋をした

そのときはその恋に

おぼれる事も出来た


だけど

そんな時でさえ

街角で見かける彼の笑顔や

彼の横顔を

忘れた事は無かった


最後の恋に破れたときに

気付いたら

彼のメールアドレスを眺めていた


あれから13年が経った

まだ10代だった私達は

良くも悪くも大人になり

私は

彼の笑顔を消化する自信があったから

彼にもう一度会いたい

そう思った


手をつなぐ事や

唇を重ねる事でさえ

戸惑っていた私達は

13年後の再会では

そんな事がいともたやすく

出来る様になっていた


彼の手のひらを握り締め

お酒に飲まれながら

私は考えた


彼と恋をする事は

辛い事だったんだな


若かった私達は

そんな事を感じる余裕さえも無く

ただ淡々と別れを選んだけれど

今考えればあれは

気持ちが悲鳴をあげていたんだなと



彼は大人だった

私も大人になった


手をつなぐ事や

唇を重ねる事に

それほどの意味が無くなってしまっていた


それは切ない再会になった


自由詩 再会 Copyright yoshi 2007-07-16 00:31:31縦
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