七夕の「七」をめぐる会話の断片
楠木理沙

「七夕っていうのは、七月七日だからこそ、俺の心を躍らすんだよなあ」
残り二枚のトランプを、わざとらしくかき混ぜながら男は言った。
「あら、そもそもあなたが七夕に興味があること自体意外だけれど。でも、どうしてかしら?」
泡がなくなったビールを口に運びながら、女は聞いた。
「俺がギャンブラーだからさ。そう、もうひとつの七がどこからともなく飛んできて、スリーセブンになりそうな気がするのさ」
男は、トランプの合間から女を覗き見るようにして言った。
「一年に一度きりの男女の出会いを、スロットかなにかと一緒にしてほしくないものね。それに、あなたがギャンブラーってところにも納得いかないわ」
女は、わざとらしく突き出された方のカードを引いた。
「やっぱり、七夕には二つの七で十分よ」
手持と合わせた二枚のトランプを、表向きにしてテーブルに広げると、女は小さく笑った。


未詩・独白 七夕の「七」をめぐる会話の断片 Copyright 楠木理沙 2007-07-06 22:32:20
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