面白人生講話(5)
生田 稔
面白人生講話(5)
今日は体の調子がよい、よく眠れたし良い夢を見た。まあ幸福といえるので、幸福に就いて書いてみることにする。勧めてくださった方が居られたので、そうするのである。
(1)でも言ったように。ラッセル卿のThe conquest of happiness(幸福の征服)という本を21から22歳の期間、原文で読んだ。真剣に幸福になることを望んでいたので、丹念に辞書を引き、ノートをとつて完璧なまで調べたものであった。
何がわかったか、今思い出すのはこの本から4つの益を得た。
1.大学入試にこの本の一部が、出題され、英語が全問題の50パーセント採点されるので、合格した。公立大であったので、入りたかったのだが、受験当日その大学のトイレに、入ったところ、その大学のひどい悪口が、そこの学生と思われるものによって書かれていた。自分の学校に誇りをもてない人たちのいる学校、大したことないなとがっくりして、入学しなかった。思い出しても、そんなことしないでトイレの落書きなど気にしないで入っといたら良かった。
問題は全文がこの幸福論の文章だけというもので、殆んど暗記に近いその文章解くのは簡単至極、割り当ての半分の時間で出来上がり、呆れる人たちを尻目に、教室を出た。
だから、幸福論の与えてくれたその幸福に従えばよかった。
2.ラッセル卿は清潔な快楽主義者になることを教えた。エピィキュアリアンになることを教えた。その教えには丹念に従った。私は読書を自分の主たる業にした。
3.彼は趣味を沢山持つようにと教える。それで芸術と学問は何でも学んでみることにした。その詳細は省くけれど、年を経るごとにその趣味が渋くなるので喜んでいる。「何でも見てやろう」の小田実さんはつい先ごろ亡くなられたが。芸術と学問に就いて何でも見てやろうというのが私の意志である。それはまだ終わっていない、これからである。
4.この本は、人間の将来や生命の秘密は教えてくれなかったが。Conquest つまりquestすることを強く奨めてくれた。求めよ、そうすれば与えられますとイエスは言う。ラッセル氏の胸中にはこの言葉が場所を占め、この本を書かせたのではないか。私は幸福を求めるうちにキリスト教に出会いクリスチャンになったが。今もこのThw conquest of happiness の影響は強い。