岬へ
霜天
海沿いに走る防砂林を抜けると
右手に岬が見える
あの岬へ行こう
いつか交わした約束みたいなものだった
続いてる道は防砂林の中を
くねくねと曲がって上って下りて
右手に見えない海の音
左手にキャベツ畑で
ひらひらと蝶が舞っている
いつまでも姿を見せない海岸線は
右へ大きく曲がっていて
その先端に白い灯台
高く高く空に刺さって
見上げたとき首がごきっと鳴った
白い蝶々とキャベツ畑と松の防砂林と白い灯台と
視界いっぱいの海からはざわざわと音がして
かぶっていた帽子が空の青に消えていく
ちょっと風が強い
そんな穏やかな日で
国道から潜り込んだ道は
くねくねと曲がって上って下りて
帰りの時間に縛られながら道に迷った僕等は
ぎりぎりまで灯台を目印に追いかけたけど
今なら地図を見下ろす余裕もある
いつかの思い出はまだあの灯台にぶら下がっていて
僕はそこへ行くたびに見上げてしまう
首をごきっと鳴らしながら
岬へ
いつか交わした約束みたいなもの
有効期限はまだ切れてはいない