岬へ
霜天

海沿いに走る防砂林を抜けると
右手に岬が見える
あの岬へ行こう
いつか交わした約束みたいなものだった



続いてる道は防砂林の中を
くねくねと曲がって上って下りて
右手に見えない海の音
左手にキャベツ畑で
ひらひらと蝶が舞っている

いつまでも姿を見せない海岸線は
右へ大きく曲がっていて
その先端に白い灯台
高く高く空に刺さって
見上げたとき首がごきっと鳴った

白い蝶々とキャベツ畑と松の防砂林と白い灯台と
視界いっぱいの海からはざわざわと音がして
かぶっていた帽子が空の青に消えていく
ちょっと風が強い
そんな穏やかな日で

国道から潜り込んだ道は
くねくねと曲がって上って下りて
帰りの時間に縛られながら道に迷った僕等は
ぎりぎりまで灯台を目印に追いかけたけど
今なら地図を見下ろす余裕もある



いつかの思い出はまだあの灯台にぶら下がっていて
僕はそこへ行くたびに見上げてしまう
首をごきっと鳴らしながら



岬へ
いつか交わした約束みたいなもの
有効期限はまだ切れてはいない


自由詩 岬へ Copyright 霜天 2004-05-16 19:41:55
notebook Home 戻る