ショパンとあなた
美砂

はじめて
青い本の表紙に
CHOPIN
という文字を見いだしたとき
その下にショパンという名前を確認したとき
華やかな、うわずったような気もちが、
早く弾きたいという、せっつかれるような気持ちが
おきたでしょう、あなたにだけでなく、
先生にも、あなたのお母さんにも、
それまでピアノを続けてきただれにでも

たしかに……ショパンは感傷的かもしれない
女々しく、しとしとと濡れて
おまけに、あまりにも弾かれすぎて
消耗してしまったように感じられるときさえある
ああ、またか、と……
だが

ショパンのきこえない
ピアノは
あなたのもとにたどりついた
運命をまっとうしていない

こころみに、まだおぼつかないその手で
最初の一小節を弾いてみると
少し悲しくなりませんか、
ここからはじまる道のあまりの遠さに
ここからはじまる道のあまりの険しさに
ここからはじまる道のあまりの美しさに

あこがれは、永遠なのです



未詩・独白 ショパンとあなた Copyright 美砂 2007-06-25 22:01:31
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