女であるということ
yoshi

好きだった男の背中に爪を立てた次の日

その男の妻が現れて私に平手打ちをした

ちょうど

仕事でミスをして上司にこっぴどく叱られた日

男に慰めてもらおうと男の帰りを待っていた時だった


わけもわからず私は妻にお茶を出す

妻は言う

節操がどうの

家庭がどうの

愛情がどうの


これはピンチです

ピンチですよね?神様。

昼間に会社で上司に怒鳴られているときに

頭の中で鳴ったアラームがまた

鳴り響く


男と別れるか別れないかを執拗に問い詰められ

実家の両親を思い出す

私が高校生の頃には会話の無かった両親

愛情とは何なのか、彼らから学ぶ事は

結局無かった


妻の言う

男の愛情とはどんなにたいそうなものなんだろう

私は

男の愛情なんて、欲しいと思ったことが無かったから

あの男のためにこんなに必死になれる妻がうらやましかった


そんな事を考えていると

いつの間にかアラームが鳴り止み

コーヒーカップに添えられた妻の手の

薬指に光るリングが眩しく、そして

取り乱している彼女がかわいらしく思えてくる


私は涙を流す

ピンチのときはこれに限る

早くこのピンチが過ぎ去りますように

そんな思いを込めて涙を流すんだ


妻が帰った後

タバコに火をつける

煙を肺いっぱいに吸い込みながら考える


やはり

愛情を勝ち取る事よりも

死ぬまで女で居ることに価値がある、と


自由詩 女であるということ Copyright yoshi 2007-06-24 18:10:08
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