シンフォニア 第9番
美砂

とてもしずか
とても遅い
とても暗く
とてもくすんでいて
とても年老いて感じられ
よって、最初は足踏みをしているような
あるいは先のみえない考え事をしているような
印象をうけるかもしれないが


埃にまみれた
古い蝶の標本のなかで
もっとも地味で目立たない蝶
だが、
コレクターが「おや?」と
眼鏡を鼻先からもちあげ
瞳にその一点が
うつったとき
彼の
指がふるえだす


そのように
わたしは
それを
識別した

   
      


未詩・独白 シンフォニア 第9番 Copyright 美砂 2007-06-16 22:48:42
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