スベスベマンジュウガニ饅頭
たもつ

日曜日の午後六時三十分
サザエでございます、で始まる「サザエさん」
に新しいキャラクターが登場した
裏のおじいさんの家に下宿することとなった
私立大学生のスベスベマンジュウガニ
これから、どうそよろしくお願いします
故郷の名物である饅頭を持って磯野家に挨拶に来た
おいおい、スベスベマンジュウガニの饅頭なんて毒入りじゃねえか?
そう顔を見合わせる磯野家(一部フグタ家を含む)の人々
その沈黙を切り裂くかのように
わあ、美味しそうでしゅ
場の空気を読むことができないタラちゃんの発言に
顔をひきつらせながら、じゃあお茶でも、と立ち上がるフネ
我々がこの家族に出会えるのは日曜の午後六時三十分から七時までの僅か三十分だけであるが
彼らにも当然のことながら、一日があり、毎日があり、四季がある
波平のスベスベした頭の天辺に残った一本の毛
それはこの物語のシンボルとも言える
戦後、高度成長期、バブル、そしてその崩壊
そういった時代の荒波の中でも挫けることなく生きてきた魂である
サザエの誕生からカツオの誕生までのおそらく十数年の間に果たして何があったのか
という疑問を抱きながらも、あの歳で二人の子作りに成功した波平、フネの夫婦に
誰もが涙し、拍手喝采を送る
この永遠に歳をとることがない家族の物語に終止符が打たれるとき
最後の一本の毛を自らの手で抜こう、と波平は決心している
そんな波平の心意気など知る由もなくスベスベマンジュウガニ氏は
ドウゾドウゾ、笑顔で饅頭を勧める
ええい、ままよ、波平は恐る恐る饅頭に手を伸ばす
家長である自分が家族を守らなければ!
その瞬間、タマにこっそりと饅頭を食べさせその安全を確認したカツオが電光石火でパクリ






自由詩 スベスベマンジュウガニ饅頭 Copyright たもつ 2004-05-13 16:06:59
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