四行未詩日記・二〇〇七年四月、五月
ならぢゅん(矮猫亭)

   にせものの風が・四月二十八日

にせものの風が吹いている
吹溜りに積もる言葉もにせものばかりだ
かく言う私はほんものだろうか
もう一人の私が風に吹かれている


   翼なきもの(1)・五月十五日

雲ひとつない五月の空の下で
鋭い陽光が雀の羽を射抜くのを見た
それは少年が母の首を携え出頭した朝のこと
ささやかな翼すら僕らには許されていないのか


   翼なきもの(2)・五月十六日

翼なきゆえ老いの身を引きずり
地を這うように浮浪う者がいる
わずかな食を分け与えている
ささやかな翼でその身命を運ぶ者らに


   翼なきもの(3)・五月三十一日

つばめが飛ぶのを見ていると空はどんなに心地よいだろうかと思う
つばめも思うのだろうか、地を這う者、歩む者はどんな心持ちかと
いいや、そんなこと考えないから、ああして安々と飛んでいられるのさ
つばめが飛ぶのを見ていると空からそんな声が聞こえてくるようだ


未詩・独白 四行未詩日記・二〇〇七年四月、五月 Copyright ならぢゅん(矮猫亭) 2007-06-15 12:21:58縦
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