植物園まで
若原光彦

植物園まで
はちの子を送っていく
バスは回ってこないから
自転車でまいあさ運んでやる
自由ぐらい自分で守れと
けさ見た夢の話をしながら
ペダルをこいで坂道を登る
はっぱの裏に書いてあることが
大人の私にはもう読めない
石橋で牛車とすれ違う
かごの中から漏れている
香の匂いにちょっとよろめく
息を止めて通り過ぎてから
はちと顔をみあわせて笑う
いつのまにか雲がひとつくずれて
そのぶん空が広がっている
平原を抜けて自転車をとめる
おはようおはようと先生方が頬笑む
さあいってらっしゃいと
私ははちの子にかばんをかける
はちの子はこくりと頷いて
まっすぐ植物園に入っていく
花の間をすりぬけてゆく
はちのスモックが花粉で汚れる
土に帰るまでが遠足です
それでいいと私は笑う


未詩・独白 植物園まで Copyright 若原光彦 2007-06-01 22:23:03縦
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