要冷凍
山内緋呂子

風呂に入る前は 裸になる
これからきれいになる
通ってきて 
よこ
子供ん頃から隣が冷蔵庫で
ここで服を脱ぐけれど
父親にも
裸を見せられないほど
洋服を脱いできた

風呂のお湯など どうでもいい
「あったまりなさい
 あなたはそこであったまりなさい
 こちらは冷たいから」
水滴があつまることは女のようで

刃物を使うことに もはや抵抗はなく
処理器がピンクだろうと昨日は黄色だったろうと
黒い毛が
刃物にすべりこまれていくこと
たとえば
「これ うつくしいでしょう?」
と聞く者は 風呂の外におるかもしらん
みずいろの布の上に似合うかどうか見る者はおらん

ただ ひろげておく
   うつしておく
   のしておく

明日
小花と格子のテーブルクロス上に
ピクニック用のサンドイッチがおかれている

明日朝 
辛子チューブが立っている後ろに
子供がつけた
にこマークのシール
はがしてもはがしてもはがれるかもしらんが
黒い粘着の跡は

もはや
子供が女になるぐらいまで
生きているけども

それよりも
後ろのほうの かび
緑色でみずみずしくて
全くやっかいな生きものやねえ

冷凍庫はほら
いつもおとなしう
固まってる
何や かわいいわ


冷凍ものって
何や 


鮮度がええなあ











自由詩 要冷凍 Copyright 山内緋呂子 2004-05-09 23:44:51
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