羽化
有邑空玖

何処まで行っても交わらない二人の放物線
雲はただ憂鬱に流れゆき
君の声が聞こえない

季節は留まることなく繰り返す その呼吸を
それでも介意かまわない
空は嵐の日も青く在るから


強く交わした指切りを憶えている?


笑って背を向けた君の肩胛骨の翅
記憶を喪くしてもちゃんと翔べますように
硝子窓は未だ海の底の蒼


生まれる前の世界を憶えている?


永遠は何処にもないよ
願いはいつも叶えられない
期待は裏切られ続けて
胸には小さな絶望を抱えて生きていく
時折空を仰いで それが幸せ

翅はないけれどいつか翔べますように
そして今日も朽ちた百葉箱の中で眠ろう



自由詩 羽化 Copyright 有邑空玖 2004-05-09 20:38:20
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