要冷凍
AB(なかほど)

氷点下十五度の空気を吸いながら
せかせかと歩き
空を見上げると雪がはらはらと
はらりはらりと
降るのは粉雪でもなく
結晶のままの形で成長し
黒い手袋のひらで
そっと受け止めると
そこに星が散らばってゆく
アスファルトの上にも
星が


帰ったらシチューだよなやっぱり
と言いながら手袋で星のままの雪をはらうと
服も靴も濡れてなくて
ドアを開けると
夏子がハサミで包装フィルムを切り刻んでいた
切手サイズのそれは
ベルマークとかポイントとかそんなものではなく
きっとリサイクルマークだろう
中でもお気に入りは塩素を含まないPPだと言っていた
のを思い出しながら
ふと台所の窓の外に目をやると
その中身が散らばっていた
そうか
今日は「要冷凍」を


夏子は世界地図に
それをひとつひとつ置いてゆく
北極、南極、シベリア
マッターホルン
融けてしまうのは
明日かもしれない


僕は
素知らぬふりをしながら
一枚盗み
今住んでる街に
そっと置いてみた

溶けてしまうのは
明日かもしれない
  



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自由詩 要冷凍 Copyright AB(なかほど) 2004-05-09 16:37:53縦
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