倫理学の授業にて、おとこと
床
旧約聖書によると、人間は神によって地球が誕生してから6日目に土によって作られ、アダムがうまれたらしい。
そのあと、神は鳥や動物を作り、アダムの伴侶としようとしたのだけれど、
うまくいかない。
そんなひとつの理由から、アダムのあばら骨を一本とって、
【おんな】をつくったのだそう。
女は男から生まれたということがどうしても納得いかず、
わたしはキリスト教の大学に通い、
学びながらも「どうしてもなっとくいかん」と思い教室をでる。
あの男に会うまでのわたしは、
おとこはおとこであることにコンプレックスを持つことなんて、あるのだろうか。
といつも考えてしたし、
「おれ、ほんと鬱かも」と思い悩んで電話してくるどうねんだい男があまりに多すぎることや、おじいちゃんになっても色目をつかい、
おんなを欲しがる老人さえも、皆わたしにはアダムなんかには見えてこなかった。
あたしだけは、男から生まれなかったおんなでいたいとさえおもってしまっていた。
大学で演劇を専攻していたし、能楽堂でバイトをしているし、
大学の中でもどこか他学部とは変な種類のおんななのだと自分で決めつけていたから、
正直有望な出会いも無いまま、大学も卒業に近づいていたのだった。
倫理学の授業の最後に、堂々と、出席だけ取りに来た男が、
どうしても「とり」にしかみえなくておかしかったのに、
きがつくとあたしは彼を眼で追っていて、お昼を一緒に食べていたのだった。
そのとりにしかみえない野鳥系の男は、体格がよく、
長身で、めがねというスポーツマンなんだか真面目なんだかわからない人だったけれど、
なんだかそれもおかしくって、
ほんとうに恋に落ちていくわたしに、
幻滅するもう一人のあたしを脇に抱えて、おんなのあたしは恋をやめることが出来ない。
たとえおんなが男のアバラ骨であったとしてもいいとさえおもえてくる毎度の感情と、
もう男はうんざりだと溜息するアダムなわたしと、
季節はめぐりめぐって何度も交互して、おんなであることをやめることができず、
これからもこうしてのんびり呼吸をつづけていくのだろう。
くだらないけど、
まあまあたのしい。