要冷凍のステッカーを張られて
クローバー


保冷車の黒猫に手を触れて願うと
叶うというジンクス
内側が冷たければ冷たいほど良い恋愛のジンクス
少女は黒猫が横切ってもいいことがあると信じている
滑稽で悲しいジンクス



アイスを食べる
僕らの傍ら
恋をする氷粒
消えてなくなるまえに
0度で止まる頬のクリームにささやかな口づけ



海王星は、氷 彗星は、雪だるま
宇宙は、冷凍庫 地球は、解凍中
フロンも手伝う高速解凍

震えたりぶつかったり傷ついたりして温まる
僕らは
赤外線の粒
僕らは
目に見えないほどの熱量で



真っ黒なワゴンが止まる窓ガラスにも黒いシート
(マグロは冷凍されているから
 厄介だけど新鮮だ
 溶けたら血の匂いにも興奮してしまう
 もうすぐ食べられる
 まっててね、マグロちゃん)
黒猫に、押し込まれる少女



粉雪
その白が欲しくて
手のひらにとった子供が
透明になっていく
悲しみ



ひみつをとかしていく
とけたひみつがしみだしてくる
だいじょうぶ?君が僕に聞く
だいじょうぶ。なにもかわらないよ ちょっととけただけ
すいてきをしたららせながら
だきしめたかった
きみがこおりついてしまうからそれはできない



いろんなことがあったけれど
やがて僕らは要冷凍のステッカーを貼られて
あらたな住処へ配達されるんだろう
そのときは、それでも、やっぱり君と
同じ箱に入っていたい



未詩・独白 要冷凍のステッカーを張られて Copyright クローバー 2004-05-07 23:57:27
notebook Home 戻る