要冷凍のステッカーを張られて
クローバー
1
保冷車の黒猫に手を触れて願うと
叶うというジンクス
内側が冷たければ冷たいほど良い恋愛のジンクス
少女は黒猫が横切ってもいいことがあると信じている
滑稽で悲しいジンクス
2
アイスを食べる
僕らの傍ら
恋をする氷粒
消えてなくなるまえに
0度で止まる頬のクリームにささやかな口づけ
3
海王星は、氷 彗星は、雪だるま
宇宙は、冷凍庫 地球は、解凍中
フロンも手伝う高速解凍
震えたりぶつかったり傷ついたりして温まる
僕らは
赤外線の粒
僕らは
目に見えないほどの熱量で
4
真っ黒なワゴンが止まる窓ガラスにも黒いシート
(マグロは冷凍されているから
厄介だけど新鮮だ
溶けたら血の匂いにも興奮してしまう
もうすぐ食べられる
まっててね、マグロちゃん)
黒猫に、押し込まれる少女
5
粉雪
その白が欲しくて
手のひらにとった子供が
透明になっていく
悲しみ
6
ひみつをとかしていく
とけたひみつがしみだしてくる
だいじょうぶ?君が僕に聞く
だいじょうぶ。なにもかわらないよ ちょっととけただけ
すいてきをしたららせながら
だきしめたかった
きみがこおりついてしまうからそれはできない
7
いろんなことがあったけれど
やがて僕らは要冷凍のステッカーを貼られて
あらたな住処へ配達されるんだろう
そのときは、それでも、やっぱり君と
同じ箱に入っていたい