きみどりを知ってる
弓束

 
 あのひとは淡いきみどりに似ていた

 ひどくひどくつきおとすような感覚にまみれている
 しんそこ愉快そうなわらいごえは
 不似合いすぎて、なきそうだよ
 いつでもどこでもやさしいひとなんだってもう知ってしまってるの

 そらをかくりしていたビルたちが
 光をいっせいに放っていたよるの
 最終列車のいくつもの音は
 わたしの心臓をどうにも揺らしすぎてしまった
 こころのなかで共に疾走したの、みちびかれるまま少女だった
 
 生まれたばかりの春を抱きしめるみたいにして
 吸い取っていった、あの季節のなまえ
 きいろかった夏、甘かった陽光
 「暑いな」と一声だけですべてを連れ去ったのは、

 いつだってあのひとだったでしょう
 きみどりみたいにやさしかった、日々
 
 すべてあのひとがつくっていたのでしょう

 気付いていたのよ、(判ってしまったの)


自由詩 きみどりを知ってる Copyright 弓束 2007-05-07 01:04:12縦
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