エンターテナー
影山影司
「本や漫画、雑誌なんて所詮只の紙っぺらなんですよ。小説だったら、只の記号の羅列。写真や漫画だったら、ただのインクのシミ。そんなもの、普通に扱ったところで面白いわけがない。熟成させたり、環境を整えたり、人と思い出を共有したり、そういう事をしないと本なんてちっとも面白くない」
先日ビール片手に知人とこういう話をしたんだけど、実際どうだろう。
誰だって大福を食うときは熱々のお茶が欲しいと思うし、お茶が有った方が旨く感じるだろ? 映画を見るときは恋人や友人と一緒に見た方が面白いかもしれないし、ポップコーンとコーラ片手にパンフを眺めてから見た方が面白いときもある。
そういう、作品を見るための心構えというか、準備というか、そういうものが読書には何より必要な気がする。楽しむための何か、っていうのかな。
以前人から聞いたんだけど、ある芸術家は自分の作品を山のてっぺんに設置するんだと。で、観客はそれを見るために山道を何時間も歩かされる。また別の作品では、プールの中に沈めるんだとさ。観客は、作品を見るためにプールの中に潜らなくてはいけない。そういう手順のことを「エンター」と言うんだってよォ。
ただ作品を見るのではなく、心を「鑑賞用」に切り替えさせるんだな。それが有効に機能するかどうかはともかく、面白い考えたし僕はそれに賛同する。
本、特に文藝ってのは特にエンターが重要だと思う。(この場合のエンターは、事前作業に限らないが)想像力をフルに使うからね。理解力だっている。集中が重要な娯楽なのだ。エンターしてるかい? 皆様方。僕は、一応本蒐集も趣味の内だから色々エンターしてるぜ。勿論、暇つぶしにだらだら読むこともあるけどね。