諸行無常
相良ゆう
難しいことも簡単な言葉で説明できるようになること
それはとても素晴らしいことだけど
私は実はそのことをあまり歓迎できないのだ。
私の中には妙に頑ななところがあって
私が一生懸命、時間も労力も惜しみなくかけて
本当に苦労して理解したことを
たったの数分、数行を読んだだけで理解した気になられては
私としては素直には喜べないのだ。
あなたも私がしたように、もっと苦労して理解しなさい。
そんな風に思ってしまうときがある。
簡単にわかってもらっては困ることもあるでしょう。
感情なんかは特にそう。
私がどれだけ
私のほうがあなたよりも
私のことなんか何もわからないくせに
そんなことを思ったりしたことが どれだけあることか。
一筋縄ではいかないところが歯がゆくて素敵ではないか。
わかってもらえないもどかしさと
わかってもらっては困ってしまう
なんだかちっぽけな自尊心が
いつの間にか私という人間を作っている。
もっと素直に生きれたら
もっと賢く生きれたら
そんなことをいつも思いながら
どうにもならない自分を持て余しつつ
それもひっくるめて私なんだなと
少しの諦念と皮肉交じりの微笑みで
口に含ませた苦めの珈琲を
舌で弄ばせながら
その香りに浸るのが日々の喜びとなった。
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