暮らしの中の境界線問題
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この間テレビで西川きよしさんがこんなことをおっしゃってました。「世の中には、言っていいことと、言ってはいけないことがある」と。僕とてもう筋肉痛が一日飛んでやってくるような大の大人、ナルホド!十全に頷ける、合点のいく話です。 と、ここまでは非常によくわかるんですが、問題はそこから。つまり、似て非なるもののはずの、その2つの境界線の判断に、ヒッジョ〜に困惑することがままあるんです。
例えば職場に、「開き直って、もう自分のハゲを売りにしている課長」がいるとします。その場合、合コン等の席において、部下である僕は課長の「ハゲ」が最大限に活かされるようにサポートすればいいわけです。マイナス点(ハゲ)を、魅力的なチャームポイントとして、強引にプラス点へ! さりげなくブルース・ウィリスやマルコヴィッチ等の(禿げている)ハリウッドスターの話題で課長を盛り上げるのもいいでしょう。 この場合、「ハゲ」は「言ってもいいこと」です。もちろん課長が「ハゲ」を売りにしてない場合は、「ハゲ」は絶対に「言ってはいけないこと」です。このくらいのことは歯抜けの僕にだってわかります。駆け足で次は、応用編にいってみたいと思います。
応用編ということで次は、「言えること」と「言えないこと」です。
「ゴキブリが載ったラーメンを出された」
これはもちろん「言えること」ですよね。当然すごく怒ります。
じゃあ「ラーメンの器にさりげなく指が入っていた(スープには入ってない)」
この場合は、これは、...わかりません...。おそらく、きっぱり「言う」人も、気になったけど「言わない」もいるでしょう。まあ常識的に判断して「言えること」の範疇ではあると思います。その「度合」や「具合」にもよりますが、僕はたぶん、言えません。
陳腐な例ですが、そんなふうに「言えること」と「言えないこと」の境界線附近には、常にケースバイケース的な要素が大きく入り込んで来るため、十把一絡げに判断が出来なかったりするわけです。例えば、「コタツの中でオナラ」。これにしたって、オナラの犯人が誰なのか...? またどういった状況下なのか...? 悪意はあったか...? オナラの規模と想定される被害は...? ところで、本当にオナラだったのか...?等、身を置く条件次第で、境界線の水位まで変化してくるので、なかなか明確な判断の難しいところです。
意外と困惑する境界線問題。さらに駆け足で、僕の身近な問題にいってみようと思います。
一人暮らしで、壁が薄いぼろアパートなんかに住んでると、「お隣りがうるさい」なんてのはよくある話で、それがある限度を超すと、「苦情」として、直接お隣りさん言いに行ったり、大家さんに注意を促して貰ったりするなどして対処するわけですが、幸いなことに、僕がいま住んでいる部屋にはそういった問題はありません。その点かなり静かでいい環境です。階段の下には、大家さんが毎日のように水を与えているソテツが置いてあり、お隣りさんの部屋のドアの前には、毎日のように、大きなゴキブリの死骸がプイと捨てられいます。...って、これ問題ですよ!
ここまで検証してきた、「言えること」と「言えないこと」の境界線問題。それは一様にスパリと判断することが難しく、むしろその実体は、極めて移ろいやすく不確定的なものであり、アイマイなものである、ということがわかってきました。
その成果を慎重に、十分に踏まえた上での僕の結論です。
『お隣りの部屋のドアの前に、毎日のように大きなゴキブリの死骸が捨てられている 』
これは、ハッキリと、「言えないこと」 です。いや、これは、「確実に言えないこと」 なのです...!
うーん、ちょっと気味悪いけど、でも確実に言えない...。お隣りに「言えない」のはもちろんのこと、大家さんにも、不動産屋さんにも、そんなの誰にも言えない...。決めとなる証拠もありませんし、第一「余計なお節介」過ぎます。
...というかこの異常な静けさ、隣には誰か住んでるんだろうか。
てか、何してる人なんJARO?
ドアの前に毎日大きなゴキブリを捨てている、
というのが唯一の気配です。ってこれ、やっぱり問題ですよ!
大体、境界線を越えて、屋根裏とか配管伝いに僕のボロ部屋までゴキブリに進入されては困るのだし、やっぱり、思い切って、直接言いに行こう! でもなんて言おう。
「ゴキブリを捨てるな!」 なのかな。やっぱり、言えない。というか、なんだかこっちがキチ○イ扱いで通報されかねないし、大家さんだってそんな苦情に取り合ってくれるとは思えないし、でもおそらく間違いなく一番迷惑しているのは僕なのだし...。
何かがハゲしく狂ってる気がするッ!!
なんて困り果てていたら、きのうお隣りが空き部屋になっていました。ぽっけらかーん...と。
ついでに、毎日のようにドアの前に捨てられていた大きなゴキブリの姿もパタリと消えてしまいました。
長々と書くようなことでもなかったんですが、、ラッキーッ!!...