さよなら
yoshi

遠くの月が淡く光を放ち

少し風の強い街の中を

一人歩いた

僕はもう

この街をあとにして

君のいない街に行かなくてはならないよ

さっきの君の涙に

しばらくは縛られて

身動きが出来なくなった心を

持て余してしまうんだろう

そんな事を思いながら

散りかけた桜の木を見上げた


僕の気持ちを

なじった君は

でも

どうにもならない事をどこかで知っていて

最後には

じゃあね

と言った


僕は

君の決意が見えた気がして

じゃあね

と繰り返す


涙がつたった君の頬に

薄く涙の跡がある

オレンジ色の照明が反射して

淡く光っている


汗をかいたグラスを

おしぼりで拭いながら

君は言う


あなたがいなくても平気

あなたがいなくても楽しいはずよ

あなたがいなくても出来る事じゃなく

あなたがいないから出来る事を探すわ

うつむいた君のまつげに

また新しい涙がぶら下がる


拭ってあげたいけれど

僕にはもう

君の涙は拭えない


今日は風が強い

明日には随分と桜が散っているだろう


月と桜と

君の涙を

心に焼き付けて

君の知らない街へ行こう










自由詩 さよなら Copyright yoshi 2007-04-02 23:35:54
notebook Home 戻る  過去 未来