創書日和。歌 【うたのように】
佐々宝砂
うたのように
春のそらに雲がうかんでいます
うたのように
あのひとの左手がきるきるとうごきます
うたのように
あのひとの右手がたくたくとはじきます
うたいかたを忘れてしまいました
うたえたのかどうかもわからなくなりました
春がやってきたので
夏のことばかりかんがえています
夏ってどんなものだったのか
あのひとはきっと教えてくれるでしょう
夏とうたは似ていた気がします
うたって何なのかわからなくなっても
あのひとがいるから
あのひとは
うたのようにつぶやきます
あのひとは
うたのように歩いてゆきます
あのひとは
ねっとりした春のはちみつのなか
まるでうたのように空をみあげているのです
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創書日和、過去。