グレープフルーツ
猫のひたい撫でるたま子

彼はわたしにグレープフルーツを剥いてくれている

私が一房で満足してしまうと、次は自分のため、ゆくゆくはグレープフルーツのために剥けない薄皮を時間を惜しまず丁寧に剥いてゆく

彼は私のパンツの紐をほどいてくれる

パンツの紐は小さく硬い、くらい布団の中でほどくのは至難の業である

明かりもつけず、彼は一心不乱にほどくことに心を裂いている

ゆくゆくはパンツの紐のために

私はといえば、彼のそんな行為が好ましいので、早く脱がしてほしい気持ちをよそにかれの作業をみつめてしまう

ゆくゆくは自分の快楽のために

彼はとても紳士で、そして時間のかかる営みをしてくれる、毎日かかさず寝る間も惜しんで

そんな彼と私のグレープフルーツの皮は、丸めたティッシュのなかでのんびりと乾き行く自分をまっている

ゆくゆくはみんなが死にゆくために





自由詩 グレープフルーツ Copyright 猫のひたい撫でるたま子 2007-03-20 11:33:27
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