四行未詩日記・二〇〇七年一月
ならぢゅん(矮猫亭)

   棒の如きもの・元日

元日、まだ家人の目覚めぬうち
ひとり庭に降り立ち寒気に浴する
「去年今年貫く棒の如きもの」はあるか
鵯がひときわ鋭く啼く、「私」を糺すように
(引用:高浜虚子、昭和二十五年作句)

   初詣・二日

人波をかき分け横入り
なにを急いで願掛けなさるか
忿怒の御姿お不動様を恐れぬか
ならばどなたに願掛けなさる

   ひとつ池に・三日

マガモ、カルガモ、オナガガモ
ひとつ池に暮らしていても
仲良さそうもなく、悪そうもなく
ただ一つの池に一緒に暮らしている

   時流・五日

時流に乗るのも才覚か
いや乗り損ねたのが災難か
ならば災難に逢うがよし、と
良寛を気取るにも才度が足らぬ

   なつかしさについて・六日

懐かしいな――ふとそんな言葉が口をつく
懐かしいね――返ってくる言葉に安らぎを覚える
でもこの目でじかには見たことのないはずの景色だ
本当はただ言葉に温もりたいだけなのかもしれない

   光あまねし・一四日

冬木立の向こう遠く秩父の山なみに夕陽がさしかかる
散り敷かれた落ち葉、子犬も少年もほの朱く照らされている
光あまねし――かつて草野心平がそう記した場所で
いまこの瞬間たしかに僕も無量の光に浴している

   出会い・二八日

冬の朝、夜空と朝焼けとが出会うあたり
家並みの向こう、二本の樹が並び立っている
二つの種子の出会い、その瞬間はいつのことであったか
出会いと出会いとの遭遇、この奇蹟はいつまで続くのだろうか


未詩・独白 四行未詩日記・二〇〇七年一月 Copyright ならぢゅん(矮猫亭) 2007-03-13 12:18:04縦
notebook Home