ぼろぼろのつばさ 1
青色銀河団
[誰もいない空で]
なあもういいからさ
だれもみてないからさ
もう泣いちゃえよ
ちっちゃいころみたくさ
はいの
おくのほうがさ
いたくなるまで
おもいっきり泣いちゃえよ
かおなんかさ
うんと
ぐしゃぐしゃにしてさ
はなみずだらだら
ながしてさ
泣いちゃえよ
そんでさ
きがすんだらさ
かえっておいで
ごはんつくってまってるから
[愛だろ、愛っ]
オレはな
ホント
オマエを愛してるんだぜ
どんくらい
愛してるかっちゅうとな
たとえばな
全世界を敵に回してもだな
オレは…
オレは…逃げちゃうかもしんね
いやぜってーオレは逃ちゃうな
台湾だろうが香港だろうがベトナムだろうがラオスだろうがバング
ラディッシュだろうがブータンだろうがバキスタンだろうがタジキス
タンだろうがウズベキスタンだろうがトルクメニスタンだろうがアゼ
ルバイジャンだろうがアルメニアだろうがだろうがだろうがだろうが
ホント世界の果てまでだって逃げ切ってみせるぜ
オマエと一緒ならな
[天使]
おれさ
さっきから
詩ばっかかいてっけど
ほんとはてんしなんだぜ
知ってた?
でもさ
つばさがほら
もうぼろぼろだからさ
とべないんだ
かみさまんとこ
もどれないの
だから
詩
かいてんの
[ひとりぼっちの天使]
おれは天使だぜ
空だってびゅんびゅんとべたんだぜ
おれは天使だぜ
神様の右腕として天地創造だって手伝ったんだぜ
おれは天使だぜ
人間の願いならなんでもかなえることができたんだぜ
でもおれは天使
たったひとりぼっちの天使なんだぜ
[思い出光線]
ふとした拍子で
むかし好きだった人を
思い出して
ぼんやりしたりしませんか
そんなとき
じつは
おれが
思い出光線を
浴びせてるんです
[女の子には特別]
世界中の泣いてる女の子のために
おれが特別な魔法をかけてあげよう
今晩ねるときに
「天使さん大好き!」って唱えてごらん
そしたら明日の朝
大好きなママがおはようって
キスしておこしてくれるよ
そうさおれは女の子には特別にやさしいのさ
「けっ」とか言ってるそこの野郎
男はお呼びじゃないから
あの言っとくけどこうして即興で書いてんの、
森雪之丞って元天使の書いた詩集のパクリじゃないからな。
あれすごくいい詩集だけど。
[朝]
海が柔らかいよ
白い梅も匂ってるし
空だって柔らかだよ
ほら水蒸気があんなきもちよさそうにながれてる
東京の
やさしくておおきな空だよ
やあ
おはよう
[Tear]
水色のせなかを
ふるわせて
泣いてるきみ
どうしてこんなにも
おれを
無口にしちまうんだ
女の子の
なみだってやつは
[.。o○]
部屋を掃除してたら
ひきだしの奥から
ころんと
転がりおちた
銀色のわっか
まだ
ひとつだけ残ってた
恋の破片
[永遠]
電算機が計算し続けても
永遠に解にいたらぬもの
博物館に陳列された白い羽根の硬度や
菫色の傘をもつ母の肩越しの虹曲線
月光につめたく濡れる貝殻のひびき
いつかそれら古いことばがたち現れ
にじんだ誰かの手紙となり
ようやく配達されるまでの
永遠の時間のなかで
おまえたちは眠りつづけるだろう