yoshi

私は影でした

ずっとあなたの側に寄り添い

どんなときもあなたと

歩を共にし

あなたの見るものすべてを見て

あなたの感じる事をすべて知っていました

太陽の方角によっては

あなたの横顔しか見れないときや

あなたの後姿だけを見ているときがあって

あなたの顔を正面から見たいときは

じっと時を待ったものです

夜になると太陽が沈むので

あなたとは会えなくなり

私は闇の中でひとりひざを抱えました

最後に見たあなたの顔が

悲しそうだったり、辛そうだったりすると

私はその夜一晩中

あなたの気持ちで眠れぬ夜を過ごしました

私はあなたを

愛していたのかもしれません

だけど

憎んだ事もあるように思います

あなたは私を見てくれないから

私を感じてくれないから

私はあなたに踏まれても

耐え続けていたからです

ある日の帰り道

夕日の綺麗な日でした

川原に降りるための幅の細い階段に

あなたは腰掛けていました

足元に落ちている石を

ぽんぽんと投げています

その時私はあなたの正面にいましたから

あなたの顔がよく見えました

泣いているように見えました

笑っているようにも見えました

仕事で何かあったんだろうか

オフィスの中の事を知る事が出来ない私は

とても心配しました

だけど私は思いました

私が心配をしたところで

あなたの力にはなれない

あなたを想っても想っても

あなたは私には気づかない


私は太陽が沈みかけたとき

街灯の灯りにうっすらと照らされながら

頑張ってあなたの側に居続けました

消え入りそうな私は

憎らしく思った事

愛しく思ったことをいくつも

思い出していました

だけど私は

やはり

あなたの側にいたい

あなたの影でいたいと思いました

私は

あなたに愛されない事を

あなたに気づかれないことを

受け入れようと思いました

あなたの姿や

あなたの笑顔を

見れなくなる事よりも

今の私の存在を

私自身が受け入れなければと

思いました


私はその時

あなたを愛し続けることを

決めたのでした

あなたの

側に居続ける事を

覚悟したのでした

街灯の灯りの下

時おり瞬く灯りのせいで

少し消えかけながらも

私はあなたの背中にすがるのでした


自由詩Copyright yoshi 2007-02-22 22:48:29
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