初恋の日々
yoshi

雲間に見え隠れする太陽が

時おり暖かな日差しをくれて

今日は暖かくなりそうだと

ラジオが言っている

私は

学生カバンの蓋を

開けたり閉めたりしながら

となりに座っている老人の聞く

ラジオの音に耳を傾けた

いつも来る

この公園のベンチで

いつもの角度で彼を見る

いつもの老人の

いつも聞いているそのラジオ番組は

妙に気が抜けていて

耳に心地いい

彼が

グローブからボールをこぼし

先輩からやじられながら

駆け足でボールを拾いに行く

ボールがこちらへ転がるから

私は目を伏せる

時おり暖かいけれど

冷たい風の吹くその公園のベンチで

私は今日も彼を見る

ラジオの音が

聞こえなくなった

いつの間にか老人はベンチを立ち

木立の中を北へ向かって歩いている

すっかり冷え切った指先を

吐息で温めて

私もベンチを立つ

彼は今日も

いつもの笑顔で笑っていた

彼がいつまでも

その笑顔を忘れないでいてくれたら

私はきっと

明日もあさっても

このベンチに座り続けるだろう


これが

初恋なんだな









自由詩 初恋の日々 Copyright yoshi 2007-02-14 20:01:53縦
notebook Home 戻る  過去 未来