エスカルゴ
曠野

エスカルゴ、お前から風が吹く。
かわいらしい風が。
それは兎の足あと
恋人の名前
花火を見つめる子供のかお

エスカルゴ、お前の足あとは銀色で細い。
そんなお前は雨を呼ぶ。
たどたどしい雨が。
それは初めての恋文
キスをしたての唇
鍵盤に恐る恐る触れる少女

エスカルゴ、お前の呼んだ雨は
次々に溜まり湖となる。
その清々しい銀の波紋の下
私は身を横たえよう。
あのいとしい風が水面を揺らすだろう。
たどたどしい雨もまた訪れ。

エスカルゴ。
恋人の名は、思い出せない。





未詩・独白 エスカルゴ Copyright 曠野 2007-01-22 00:30:48
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