おめでとうの仕方
吉田ぐんじょう

二十三年間生きてきたのに
おめでとうのひとつも
満足に言えない
そのことについて
頬杖をついて考える
一人で
室内で吐く息は白い
ストーブは足元ばかりを熱くする

家族宛てに届いた年賀状は
なんだか生まれたての鳩に似ている
わたし宛に届いた不採用通知は
死んだ蛇に少し似ている

午後三時
中途半端な切れ端をごみ箱に沈めて
わたしは新しい履歴書を買いに出る
歩きながら
御免ねと思う
何に対してでもなく
又は何もかもに対して

最寄のコンビ二へ入って直ぐ
高校時代にここで
アルバイトをしていたことを思い出す
店長は六年前と同じで
懐かしくて声をかけようとしたが
おでんに夢中の店長は
ただそっけなくいらっしゃいませと言うばかり
癪に障ったので履歴書と一緒に
レモン味のアルコール飲料を購入した
そうして近くのたんぼのあぜ道に座って
それを飲んだ

正月の町は
モノクロのサイレント映画のようだ

俯いて小声で
おめでとう、と練習してみたが
わたしの軽薄なおめでとうは
あっというまに風にさらわれ
鼻先にはレモンのにおいだけが残った


自由詩 おめでとうの仕方 Copyright 吉田ぐんじょう 2007-01-12 11:12:25
notebook Home 戻る