シナリオ・「ウエストロード・ラブストーリー」(改編稿)②/平瀬たかのり
 
以下の方がこの文書を「良い」と認めました。
- 由木名緒美 
感想を書くのが野暮な思いになり……いえ、言葉にできませんでした。

感動いたしました。
- たま 
平瀬さん。

拝読しました。
能く書けてますね。感心しました。シナリオとして完璧ではないかと思います。
イントロからもうすでに映画館に座っているような気分になりました。
若い僧侶の原付バイクに誘われて、すんなり物語に入ることができます。

最終選考での審査員の選評が分かりませんが、改稿以前の本作が最終に残ったということは素晴らしいと思います。
おめでとうございます。

もうすでに最終選考の常連になった平瀬さんに、最終選考を突破するための助言を差し上げたいのですが、ぼくの助言などなんの役にも立たないかも知れません。気になったところをいくつか上げてみます。

まずタイトル。横文字ですね。「ウエストロード」が京都の西大路通りに繋がるのだと思いますが、もうひとつピンときません。このタイトルから作品の舞台である京都に誘うのは無理があります。
例えば、海外で翻訳される日本人の小説のタイトルにはよく「TOKYO」が入ったりします。小説の内容とはまったく関係なくてもです。
それは海外で日本の小説を売り込むための戦略なのですが、なかなかこれは馬鹿にできません。売り込むためには馬鹿馬鹿しいことも必要です。
「世界の中心で、愛をさけぶ」というベストセラー小説のタイトルを考えたのは作者ではなく、編集者です。作者はこのタイトルを嫌がったそうです。でも、編集者は売り込むことだけを考えたのです。それでベストセラーです。
タイトルって大切です。タイトルだけで最終選考を突破できることができます。

つぎに、登場人物です。ヒーロー、ヒロイン、脇役、よく書けています。平瀬さんはほんとうにセリフが上手い。そこで、ネームです。
静真・・・読めません。映画はシナリオみたいに漢字が出てくる訳ではありませんが、選考委員はこれをなんと読んだでしょうか。シズマまたは、シンシンでしょうか。

ストーリーです。パチンコ屋の駐車場から始まる夢のようなラブストーリーです。その展開にワクワクします。特にふたりの初デートの場面はとても良かったです。ところがヒーローとヒロインのふたりとも死んでしまいます。まるでロミオとジュリエットみたいに。
ヒロインが死んでしまうラブストーリーには、賛否両論があります。平瀬さんもそのことは承知のうえで書いたと思います。
このシナリオは回想劇なのでふたりの死はイントロに出てきます。良い選択だと思いますが、ストーリーの展開が読めてしまいます。予定調和になってしまいますから、後半は盛り上がりません。ラストシーンを幻想的に描くことで着地点には成功していますが。

そのラストシーンは京福電車の車内です。そこで気がつきます。このシナリオの陰の主役はこの一両編成の電車なのです。西大路通りではありません。
平瀬さんは京都のことよくご存じだと思います。この一両編成の電車をもっと描いても良かったかなと。

最終選考で、審査員は各作品の底の深さを測ります。そうしてもっとも深い作品を入選作とします。さいごの決め手は作品の底の深さです。
審査員の選評をもとに改稿されたそうですが、それはテクニックの問題であって、作品の本質に迫るものではないように思います。

ぜひ、新作に挑戦して、今度こそは審査員をギャフンと言わせてください。
平瀬さんなら書けます。ここまで来たら、もうあとひと踏ん張りです。
頑張りましょう。ぼくも頑張ります。


 
作者より:
由木名緒美さま。
 ありがとうございます。お言葉たいへんに嬉しく思います。励みになります。
 最終選考に残るという望外の結果となりましたが、大脚本家、荒井晴彦先生はじめ、審査員の方々からは厳しい評価を得た作品でもあります。いただいた講評をもとに改編稿として公開させていただきました。自分の根っこに在る〈詩〉を大切にしながら、これからもシナリオを書いていければと思っています。 
---2023/12/14 20:45追記---

たまさん。

 心のこもったご意見ありがとうございます。本当に嬉しく思います。
 この作品は、一次選考を通ったとき、自分でも驚きまして。駆け出しとはいえ、アイドルとデートなんて「中二病炸裂!」みたいな稿が最終選考に残るとは、みたいな感じでした。

 二人が死ぬシーン、応募稿ではありませんでした。ですが選評で多数の審査員の方々から「それが書かれてないのはおかしい」と指摘を受けまして、改稿した次第です。「タイタニック」を例に出して指摘されている審査員の方もおられました。自分としては書き直してみたものの…という思いは、正直あります。

 二人の手の痣ですが、二人とも小指が生まれつき欠損しているという設定でした。ここを荒井晴彦先生に「ヤクザじゃあるまいし、変!」と一刀両断されまして。やっぱり、最初に浮かんだアイデアが傷になることもあるのだなあと。
 それから二人が観る映画ですが、応募稿は『太陽がいっぱい』でした。で、それも荒井御大に「この場面で『太陽がいっぱい』はおかしい。この人本当に映画が好きなのか」と身も蓋もないご指摘いただきまして。いや、ここ『冒険者たち』』とどっちにするか迷ったんです。で、まあアラン・ドロンといえばやっぱり『太陽がいっぱい』だよな、と安易な選択してしまい、その安易さを見抜かれてしまいました。

 この作品で最終選考、次作で三次選考、そしてことしの城戸賞で二次選考と、あと一歩が届きません。独学でここまで来られたの感慨はありますが、あと一歩、二歩、踏み込みが足りないのだと思います。書ける時間は限られているのですが、「この一作」に真摯に向かい、深く考え改稿の上、応募しようと次作に取り掛かっております。

 お読みいただいた上、ご感想いただきありがとうございました。胸が熱くなりました。月並みな言葉ですが、頑張って書いていきます。

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