花の化石/白島真
アラガイsさんのコメント

実は生きた化石と呼ばれる生き物はいまでも数多く生息しているようです。
生きたまま花の化石になりたい。
このような古代の生き物のまま生きていたいと言う少女の願望。これは逆に永遠に生き続けていたいという願望を意味している。ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち。少女は亡き父と母に対する想いを引き連れながら、語り手は幻想的な描写でそれを語ります。
不思議ですね。ひらがなの擬音やカタカナの扱いは、まるで黄泉の国から語りかけるように神秘的で少し怖い。それは万物に宿る神々のように、あちらこちらと生き霊がさ迷う様子で五感を刺激します。
これは作者によって読み手の感覚を意識された技術的な試みでもあるのでしょう。
生きたまま花の化石になりたい。その少女に託した夢。それは美しさが永遠に引き継がれるという作者の願望でしょうか。何れは朽ちてゆく肉体を喩えに、深い精神性を探り出そうと思考に試みた佳い作品だと思います。