人々の日/山中 烏流
ゴースト(無月野青馬)さんのコメント
…群像ですね。
そして、それを見つめる目。
編集が施されているドキュメンタリーを観るよりも、類型ばかりが並ぶ漫画や小説を読むよりも、外に出て、実際の“人々”を観ることの方が、本当のドキュメンタリーに触れているし、本当の小説を読んでいるのだと、再認識させてくれる作品ですね。
…で、尚且つ、個人の内面描写もあり、前作・前々作では希薄だった、個の世間との繋がりの部分もはっきりと表出し、ラストを活かしているので、構成が良い意味で詩らしいと思いました。
そして、この作品と前々作とのリンクもあり(誰かに何かを貰うというシークエンスなど)、とても楽しく読みました。
作品内容にはとても「楽しい」とは呼べない種類の、誠実な苦悩を感じさせる詩なのですが、
組み立て方に感心し、難しい者達が流れるように脳髄に侵入して来る為に読者の目は楽しいのでした。
そして、詩の背後に、現代人の苦闘の個人史を読み取れ、多重的なテキストに没入出来ました。
苺蝶さんからすれば、模索の詩作なのだから「詩らしい」と保守的なことを言われることは、心外だと思われるとは思うのですが、詩自体には幸せな待遇であると思いました。
今回は、敢えて、このルート・この結末が選択されたのでしょうから。


…これまでの模索の3作品には、それぞれに別の強みがあり、その描き分けの試みは面白いですし、次の模索があるのなら、どんな試みをなされるのかが楽しみです。