ガンダムなひと/恋月 ぴの
atsuchan69さんのコメント
  蒼い唇

髪も乱れ、瓦礫の町を彷徨えば
朔風に蒼い唇を窄ませて
徒(あど)なく見あげる空は燃えさかり
逃奔する馬、羊、火を吹くF‐35

やがて地獄の淵から立ちのぼる
ナパームで焼かれた肌の、酷く邪まな匂い
戦闘にあけくれる野郎どもの罵声と
乾いた瀝青の道が延々とつづく

目視のスティンガーに撃墜された、
——あれは生贄の機械獣。

唯、元気よく隊からはみだした
残忍な兵士であるこの俺の、
逞しい、ブリキの心が荒馬を食らう
羊を食らい、攻撃者を食らう

見ろよ、憎しみの大地が沈んでゆく
奈落に旧い年月が崩れ落ちる、
聳え立つ摩天楼とゴミ捨て場の変死体
点滅する信号や文字の消えた標識・・・・

かがやく夜の子供たちよ、
終りの日が来たら口づさみなさい
失われた瞳に涙が零れたなら
けして畏れずに、こう呟くのだ——

 鮮紅色の愛しい薔薇が、
 傲慢な咎の街に咲いたから
 生き血を吸った鋼鉄の鋭い棘と棘が
 儚い命たちを暁に咲かせた、と