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干しかけた洗濯物
風の一吹きに掬い上げられ
みんな地べたに、落ちちゃった
シャツにトランクス、靴下にパジャマ
着古した心から、思い出の沁みを洗い落として
まっさらに漂白したっ ....
夏祭りの帰り
土産もない手を
ボッケに突っ込み
田舎道を歩いていた
暗い山影と
遠ざかる喧噪
鈴虫の声と
小川の水音が
草葉の陰から
呟くように
....
上手く折れない
紙飛行機が
放り込んだ屑籠の
縁から顔を覗かせている
拾い上げて
半開きの窓に向けて
今一度、飛ばしてみるが
盲の鳥のように
あさっての方向へ ....
一
雨粒に君を閉じ込めて
空にぶら下げておく
いつでも好きな時に
見えない糸を
風の鋏で切って
僕の前で
パチンと弾けて
ほしいから
二 ....
苦しかったら
ここにおいでと
空が囁いてくれた
でも私には
翼がなかった
辛くなったら
ここにおいでと
海が囁いてくれた
でも私には
鰓がなかった
....
夜空の星を撃ち落し
野に転がった光の匂いを
猟犬の鼻に辿らせた
茂みに瞬く星明りは
拾い上げても尚
掌に小さかった
なぜならそれは
潰えかけた
希望だったから ....
私は何でも食べる
例えばあなた
あなたの息を
あなたの足跡を
食べる
見上げる空を
闇の奥に見る夢を
私は何でも食べる
例えばわたし
わたしの ....
゛る゛の字の
足のところって
くるりと丸まってる
ギャグマンガ的表現の
横から見た駆け足みたいで
なかなか愛らしい
゛る゛の字の
頭のところは
べったりと ....
のばした指先の向こうに
サクランボが揺れている
それを
掴むことができる
噛み 食んで
味わうことができる
幸せが揺れている
....
夜には涙を流し
昼には歯を食いしばり
そんな 見苦しい表情を
想い出の中に焼き付けてきた
大勢の自分達
心の物置に積み上げた
記憶のフィルムに踊りだ ....
君から赤を絞り出そう
絵の具のチューブみたいに
滴り落ちるほどの血を吸った
むくむくの ナプキンのように
つまらないんだろ?
一体 何が楽しくて
そんな風に 自分を苦しめ ....
よく切れるナイフを手に取り
一粒の砂に 切りつけようとしたが
どうしてもできない
手の平は血まみれになり
その上に置いた砂は
無傷のまま 涼しい顔で
寝息を立てている ....
日々を無駄に過ごすなって
お袋によく言われたっけ
汚れたエプロンを
鎧みたいにまとって
布団たたきを握りしめ
水仕事に荒れた両手を 腰に当てて
にらんでいたお袋
....
それは 真夜中の出来事だった
白いシーツにくるまった
私の鼓膜をくすぐる
乾いた漣の音
胸騒ぎが
私を揺り起こした
その音が響いてくるのは
....
古いデパートの舞台裏、
職員用通路の片隅に、
忘れられかけた物置がある。
狭く、薄暗いその部屋には、
用済みになった小道具が。
埃をかぶったハンガー、
古い ....
君は透き通り始める
すべての色に
染まり終えたあとで
それは
詩の終わりでもある
私は君に
世界を見る
ガラス越しに出会う 朝のように
....
砂の上を歩く
右手には 打ち寄せる波
後ろから 追いかけてくる太陽
大きな神様が
水平線に腰を下ろし
風と光を使って 何かを洗っている
穏やかな水音
....
人の心は水に似て
器に合わせて形を変える
だけど時には凍りつき
器の方を壊してしまう
水は低きに流れるが
それは惰性の気楽さで
時に情熱の火に触 ....
街を歩くと
人がいる
海を泳げば
魚がいるし
空を飛べば
鳥がいるけど
街には人がいる
たくさんの箱の中に
住んでいるし
たくさんの道の上を
流れているし
....
あなたをぎゅっと絞り上げると
悲しみや後悔がぽたぽたと滴を垂らした
僕は舌を突きだしてそれを受けとめ
首を反らして飲み込んだ
夜のバーは光の島
僕はそこに流れ着いた遭難者
あなたと ....
雲一つない青空に
紙飛行機が舞っている
一つや二つじゃない
それこそ無数に
たくさんの白い翼が
たくさんの願いをのせて
思い思いの方角へと
ゆっくり 漂う
涙を孕んだ雨 ....
君はテーブルに頬杖をついて
文字の積み木で遊んでいる
利き腕の人差し指で
柔らかい母音を
戯れに曲げながら
暗い藍の色で出来た゛う ゛の文字は
うつむいた気持ちの音
....
正しさってなんだろう
正方形の角が 誰かの頬に食い込むとき
その痛みが 真四角の正しさを証しするのだろうか
正しさってなんだろう
まっすぐな線をまっすぐに歩くことが
そんなに尊い ....
誰もが腹を立てている
作り笑いの下で
沸騰するいら立ち
火にかけた薬缶の様に
そしてここに
社会を舞踏室に例えた洒落者がいた
両開きのドアを押し開け一礼と共に
シャンデリア煌 ....
あるところに
色を嫌うレンズがあった
それが愛したのは形
そして光と影の
バランスだけ
そのレンズを通して見ると
総ての花が おしゃべりをやめた
春の日差しの ....
女って 大好きだ
女を喩えるなら
血の滴るような野薔薇の朱
生真面目な緑に身を固めた
この暗い原野の世界を点々と彩る
秘められた また明かされた 情熱の色
その両目は 傷つきや ....
少年は飛んで行った
アスファルトの空に向かって
自由が欲しかった この世は生ける監獄
少年が泣き叫んだ時
世界は耳をふさいだ 目を閉ざした
口をつぐんだ そして今
彼が手の届かないとこ ....
文鎮が
ふうわり ふわりと宙に浮き
驚く書生の顔前を ナマコのように漂って
原稿用紙が舞い上がり
驚く書生の目の前で 舞子みたいに踊りだし
万年筆が身悶えし 書生の指を逃れ出て
ぽ ....
文字が空から降ってくる
あられみたいに降ってくる
だけど地面は乾いたままで
溶けることなく積み重なる
文字、文字、文字、文字…
文字が空から降ってくる
僕らの周りに降ってくる
それは ....
おぼろ月夜の 帰り道
家の鍵束を頭上に放って 銀のきらめきを掴みとる
幸せってやつも こんな風に掴み取れればいいのに
冷ややかな街灯が そんな姿をあざ笑う
屑同然の値札が付けられた 役立たずの ....
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