理由があって
朝まで駅で過ごした
ベンチの下に
甲虫が死んでいた
裏返っていた
始発まで眠り
目を覚ますと
甲虫が裏返ったまま
手足を動かしていた
生きていたのだ
理由 ....
{引用= 煙は夜通し立ち昇っていたが、朝が来ると流れ
去っていった。山火事。草木は焦げ、稲穂の色。
焼死体を、鴉の声が埋葬してゆく。一つ一つ、一
つ一つ。雪を雪が追う。視 ....
日焼けした砂浜に
(いるはずもない恋石亀
)うぶ毛でも覗いてやろうか
(そんなことできはしない
わかっているだろう)
【秘密の基地を造る】
親亀がゆく 雌亀その「直感的交換」 ....
草木のゆれる
その方角に
わたしはときを聴いている
これまでを悔い
これからを問い
わたしは巧みに
たじろいでいる
雲のちぎれる
その方角に
わたしはことばを ....
五つとひとつの指で実をささえ
右は左の午後を見わたした
こぼれゆくものを
見わたした
鉄とガラスのはざまの蜘蛛
ずっと光を投げつづけている
陽でも灯でもない
雨の ....
いま、
とても大事なことをひとつ思い出したんだけど
それなんだっけ
こんなに晴れた夜の
誰もいない
隠された路地と
その横にだだっ広く広がる運動場の中には
ほったらかしの
ナウマン ....