さようなら
どこかでだれかが
そういって
じぶんのかげに
てをふっていた
とんがり屋根の上から薄汚れた子どもたちが落ちてきた
彼らは卑しく、とてもずる賢い
知らないうちにお金を盗み、食べ物を奪い取るかもしれない
隠れるのも上手くて、木登りだって得意なや ....
私の胸にはいつも夕子さんがいらっしゃいます。
物静かで、それでいて情緒的な女性です。
ある晴れた午後のこと、買い物をする私の背中に触れる夕子さん。
5月の太陽は暑く、ひんやりとし ....
無量無辺のこのことを
寄る辺なき時代の卵白が包んでいる
さかさまつげを背にして眠る
わたしたちの
やさしい負けはいつの日も決まっていて
いつか必ず
だれの目にもとまらない場所で
....
もっと寒くなれよ冬
体を貫く冷たさで
焦がれてゆくばかりの心を
殺してはくれないか
もっと寒くなれよ冬
町を駆け抜ける風の
ありのままの勢いで
一緒に海へゆこう
春がくる前に
....
小路の角を曲がると
家並みの
屋根の傾きの下で
格子戸が眼をつむっている
晴れても明るくならない
印画の街
軒と軒とが接するように
建てこんでいる
植物は軒下におかれた
盆栽 ....
痩せた熊が
水底に沈んでゆく
両の眼を開けたまま
だだっぴろい冬は
晴れた日の砂漠のようにきらめき
しろい女は
しろい男の唇に
海より ....
父の抜け毛が浮いている
私は風呂に入っている
父の細い髪の毛が浮いている
それはもう白くかすんで
私はただ風呂に入っている
漂っている
特別養護老人ホームで
夜勤のアルバイトをしている
夜勤明けに施設の門を潜ると
男子高校生が
度胸試しに
施設から出たゴミ袋
すなわち
うんこ山盛り袋にタッチしていた
元気な俺な ....
夢をごらん
今の君だからこそ見られる夢を
その身に纏う翳りさえ透明なうちに
夢をごらん
翼ある夢を
コーヌコピアから溢れる花と果実に
彩られた夢をごらん
君の心から生まれつづける ....
わたしは君の隣にいたかった。
でも君は心も開かずに死んでしまったね。
だから私は君に似たある女の子の友達になったよ。
君を忘れたわけじゃないんだ。
君が大好きだったんだ ....
温まった砂浜に
背中を合わせて
目を閉じたら
じわっと溶けて
地球に
同化していく
くちばしの長く伸びた蚊に足元を見られて貧血になるくらい
過不足のないライン上を歩いているから
ワタシの内側から何かを持っていこうとしないでほしい
ダレに宛てるわけでもないけれど連絡通路をてくてく ....