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やわらかな寝息の燈る喉元に 肌近づけて我が息舫う
臍の緒のかすかな匂いと乾く色 掌のうえで吹き飛びそうな
汗ばんだ額に張り付く細い毛は 彼が残した最期の祝福
ああ
くらやみにともる
しろい手よ
たいまつの
ひかりのようだ
曇天を 背にしてみている つめたい戸
後ろ手に 鍵盤鳴らす 午後の2時
なめらかな 白い手にさす 慾と情
氷水 とけきるまえに 果てる夢
汗ばんで 覚えた匂い 青畳
....
空が高い日は、鼓動がおちついている気がする。雨のふる日は、だからきもちが落ち着かないのかというと、それはそうでもなく、落ち着かないというよりは、鼓動をきれいに落としてしまっているから、からだは空き ....
からだのそとがわに
うすいまくがはっている
からだのそとがわに張ったうすいまくを含めて
わたしをわたしだとおもっているのでしょうが
わたしは
あなたがたがおもっているよりも
ほんの ....
愛情は肉のかたまりのようです
二十をこえても十の少女のようだった脚を
愛情はたやすく女のそれに変えてしまった
胸にも腰にも腕にも愛情は柔らかく実って
腕のすき間から零れるような身体ではない
....
恋人の誕生日のまえの晩に、お洒落をしてごはんをたべに行った。
食前酒のあまい香りと、白くなめらかなテーブルクロス、糊のきいた従業員の制服、はきなれないヒールの踵をこっそり外すわたし。
鮭に生ク ....
そらがたかくて
胸がやぶけそうだから
あおぞらをひとつかみ
胸ポケットにあげるね
ほら
いきができるだろ
はだざむい夜は 皮膚をつないで朝をまつ
雨のふる午後は 髪をぬらして屋根に走る
わたしたちは すでに 与えられている
赤く灯る 血のような夕に
ほらみてごらん
一直線に祈りが走る ....
よるにふあんがとかされている
椅子のかげ カーテンのうら 天井のすみ 流し台のした クロークの扉 絨毯の毛のなか
ふあんが少しずつ まんべんなく とかされている
しめった寝息 ざらついた黒 空っぽの皿 ....
たゆたゆと零れおちゆく蒼いとき つめに絡ませ朝をむかえる
すべりおちのたうちまわる欲情を 涙のようにみちびく指さき
肌を知りささやきを知り朝を知り 自分の皮膚の分厚さを知る
この季節はシャツの白色がやけに目につく。ころもがえ、おろしたてみたいな青い白や、あせばんだうなじの学生。来る暑さに女の子たちは胸元や腿をあるだけさらけ出すから、肌色が急に増えるのもこの季節。
緑 ....
あまおとに そらにむらがる あまおとに たましいを忘れ たましいを忘れ
はねかえり つらなる円を 欲すれど あるのは怠惰な 水溜まりのみ
ひとことに ふとしたしぐさに まなざしに 弱い ....
モモこっちにおいで
おまえはとてもよわいから
ひとりではいきていけない
モモこっちにおいで
わたしはとてもつよいから
だれのたすけも必要でない
モモこっちにおいで
だからふたりでいよ ....
夜が痙攣して朝を産む
吐息が凍って花びらにしがみつく
道路が疲弊して流れ去る
その永遠の一瞬に
愛している
完璧に混ざり合う水と油
緑の血の妊婦
指のないピアニスト
その不可能 ....
星が降ったら火傷して
まっ赤になって手を打った
いつも最初にうそついて
きらわれたって構わない
あきらめるのは
らくだった
自分のうえにもう星が
降らないことも
知っていて ....
やわらかい肌をひらくとき
心はきちんとあいていたか
うす皮をむくような目で
疑ってはいなかったか
「わたしはただ 花びらが変色するのがこわいです」
すこやかな寝息としろくなめらかな腕 みだれうつぼくの欲求
水を抱くように おもいだしている 髪の毛 指先 かさなるため息
花を抱くなら花になり
水を抱くなら水になり
雲を抱くなら雲になり
人を抱くなら人になる
ひだまりに さらされてゆく くちびると 動けずにいる ぼくの両足
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