すべてのおすすめ
板壁に花の影が映っていた。
花は微かに揺れていた。
もうすぐ冬になり枯れてしまうから、
寂しくはないだろう。
古びた板壁も10年以内には崩れて無くなるだろう。
でも今はまだ花は咲いていて、影 ....
眠っていたら、声がした
隣の部屋に、営業が来ている
マンションは鉄筋コンクリートだから
声がとても響く
内容はわからないが誰かが営業している
わたしはドアの側まで行き耳を押し当てる
明るい ....
かみさまようちえんはお空の上にあります
今日は楽しい運動会
お母さんもお父さんもいませんが
こどもたちはみんな元気です
かみさまようちえんにはお花もおやつもおもちゃも
たくさんたくさんありま ....
ここは誰かの土地だから
入ってはダメよ
ほら2センチはみ出して
男の子がひとさし指を削がれたよ
にこにこ笑いながら
誘うおじいさんとおばあさん
ダメよ入ったら
ほらまたはみ出して
きれ ....
しだいに近づいてくる足音
ずしん
ずしん
わたしにはわかる
あなたが来ているのが
あなたはわたしを手に入れたい
それが幻想でしかないとわかっていても
あなたはわたしを手に入れたい
....
毎年几帳面に
庭で鳴く虫たちも
ただ手をつくねているのではなく
住みよいほうへ
住みよいほうへ
移動しながら
運を天にまかせて
鳴いているのだろう
こんな十五夜の晩には
ムカシ、ムカシ。
目がひとつだけだった頃、家というのは全部が布と革で出来ていました。
壁は革張りで、屋根は布を何重にも重ねて、一番上にはオーガンジーやサテンなどで美しく飾るのが一般的でした。
雨 ....
それは、下北沢を過ぎたあたりでのことだった。
通勤電車はいつも通り満員で、向ヶ丘遊園から小田急線に乗り込む俺は当然のように急行電車に乗っていて、で、その電車がどんな状態かというと、本厚木あたりから乗 ....
夕方は肌色
わたしは溶けて行く
空気が肌色になって行く
境界が見えなくなる
そして夜になって
影も形も無くなる
ときどき
取られたような気持ちになって
「わたしを返して」
と
思う
または
「わたしを帰して」
かな
あなたに会えないと
悲しくて
あなたに会えた日は
うれしくて
こんなに好きで
でも愛されていない
いつもいつも
考えているのはわたしだけで
たまにやってくるあなたを待って
日々は過ぎ ....
ふと声をかけてみた
その外国人は
「ロマンスカー?」
と言って
少し笑った
新宿駅西口で
そうなんですよ日本には
ロマンスカーがあるんです
ロマンスカーはみんなを乗せて
ロマンス ....
ベランダにおいてあるトロイは
食器棚の形をしている
ガラスがはめ込まれ
割と質の良い木材が使われていて
中には食器が入っている
その食器はぜんぶニセモノ
ニセモノだけどウエッジウッドにしか ....
もう良いことなんか何も無いから
デザートを食べよう
甘い
甘い
デザートを食べよう
何がいいかな
さあ並んでちょうだい
プリンやゼリー(でも、少し物足りない)
シフォンケーキ(ぼそぼそ ....
鬱蒼とした山々の間
引かれたレールの上を
走る
蘇る鉄橋の
下では
おばあちゃんがこぼれる
谷川に近い公民館は
オープン
クーラーは無く
扇風機がぐるぐる
回っている
まるでお伽 ....
暑いのに起きられない
体から噴出す汗で
寝巻きもベッドも布団も
何もかもびしょびしょ
電話が鳴っても
知らない
チャイムが鳴っても
知らない
そんな
一人の部屋で
夏
夜も昼も
....
うらやましそうに見ていたら
「じゃあ、少し上げる」
その人は言って
端っこのほうを千切って
ちょっとだけくれた
辺りを見回すと
端っこのほうをもらって
喜んでいる人もいる
わたしは端っ ....
マッサージで気持ちよくなって
つい眠ってしまった
目を覚まして慌てて会計に行けば
どこかで見知った顔が
「ごめんなさいお会計お願いします」
わたしがそう言うと
「まだですよこれからですよ」 ....
月の夜
わたしは犬と話す
板張りの部屋で
椅子に座り
大きな犬の頭を撫でながら
大きな窓から差し込む
月の光は優しく
犬とわたしを包む
指先に犬の体温
あっというま夜が暮れた
走り出したい
鎖
すべて断ち切って
踏みしめる大地も
漂う風も
いらない
夜が
あれば
駅を出たら
あれあれ
困ったぞ
駅前のコーヒーショップは目一杯
こりゃダメだ
ハイヒール蹴立てて
走れ走れ
歩いて8分の道のり
すぐにバテました
なんでこんなことしちゃったんだろうな ....
わたしは宇宙人を見つけた
自分でそう言っていたから
たぶん宇宙人なんだと思う
宇宙人はロックバーのトイレで煙草を吸っていた
フロアが混みすぎていたからだと思う
ずいぶん痩せているから
....
縁側に近い場所に
房スグリ
隣に
コデマリ
庭を囲むように
南天
ドウダンツツジ
都忘れの花と
なぜか
マーガレットを植え込んで
お花
お花
お花がたくさん
春の匂い
夏の ....
和美が明日の本番用のキューシートを作っていると、ディレクターの竹本が取材から戻って来て大声を出した。
「なんだよこれ?」
和美は竹本の大声には慣れていたけれど、それでも、
(デカイ声出すなよバカ ....
とても寂しそうに立っていたから
声をかけられなかった
檻の中
100センチの
ペンギン
タイミングが全て合ったら
結婚しましょう
氷の上で
夕方の風は冷たくはないの
ぬるいの ....
勝手口を開けると柿の木が青空にそびえていた
白い入道雲がゆっくりと動いていた
戸を開け放ち
時折それを見上げながらわたしはササゲの筋を取る
ざるにはササゲが青々と積まれて行く
指先にササゲの ....
わたしの夢はぜんぶ叶いました
そしてひとつも叶いませんでした
夢の中で花が咲いた
見たことの無い花
見たことの無い色
夢みたいにきれい
実家の近所を走っている大きな道路がさらに拡張され、道路に近い住宅に住む人は立ち退きをしなければならなくなった。その地域は住宅街のかなり端の方に集中した。
わたしの家はそれほど道路に近くは無かったので ....
アパートの階段を
上がろうとして
あなたの部屋は
2階の真ん中あたり
これは夢だ
そう思いながら
わたしはドアを開けずにいられない
小さな1口コンロで
焼きそばを作った
火力が弱いか ....
1 2 3 4 5 6 7