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       1

鎖骨のようなライターを着火して、
円熟した蝋燭を灯せば、
仄暗いひかりの闇が、立ち上がり、
うな垂れて、黄ばんでいる静物たちを照らしては、
かつて丸い青空を支える尖塔が ....
  1 眠り

朝の眩暈のなかで、
一日の仕事を終えて、疲れ切ってから――、
職場に出かけても、
そこで、わたしにできることは、
只、泥のように眠ることだろう。
(そこには、青い灯台が、 ....
      1

夥しいひかりを散りばめた空が、
みずみずしく、墜落する光景をなぞりながら、
わたしは、雛鳥のような足裏に刻まれた、
震える心臓の記憶を、柩のなかから眺めている。

(越 ....
蒼い海峡の水面に、座礁した街がゆれる。
煌々と月に照らされて。
わたしが走るように過ぎた感傷的な浜辺が、
次々と隠されてゆき、
閉ざされた記憶の壁が、満潮の波に溶けて、
どよめいては、消えて ....
       1

十二月の眠れる月が、遅れてきた訃報に、
こわばった笑顔を見せて、
倣った白い手で、ぬれた黒髪を
乾いた空に、かきあげる。
見えるものが、切り分けられて――。
伏せられ ....
        1

寒さが沸騰する河岸に、沿って、あなたの病棟は佇む。
粉々に砕けた硝子で、鏤めている実像が、
剃刀のような冷たい乳房のうえに置かれる、
吊るされた楽園。
顔のない太陽は ....
    1 追憶の街

(そこを曲がると目的地だ。
(たくさんのヒヤシンスの花が僕たちを見ている。
(そう、あの青い塔のある丘まで競争だ。
(君の長い髪がそよかぜにのって
(春を歌っている ....
       一

観葉樹が、かぜに揺れて、嬉しそうに笑いかける。
笑いは葉脈のなかに溶けて、
世界は無言劇に浸る。
映像のように流れる無言の織物。
かぜが、喜劇に飽きるまで、永遠を飽きる ....
一、 某月某日 冬

凍る雨を浴びつづけて、一年を跨ぎ、
わたしの頬は、青ざめて、
虚ろな病棟の、白い壁に残る、
黄ばんだ古いシミに親しむ。
難い過去を追走する暗路を、
エタノールの流れ ....
ひかりの意志は、古い細密画の粗野を洗い、
陰影の微動を深めて、写実を濃厚にめぐらせる。
信仰の果てしない夢を、
高貴な光彩の眩しさのうえに、
振るい落として――。
古典はイスパニアの春を謳う ....
深くみずをたたえて、湿度を高位にくばり、
森に沈みこむ薄化粧の木霊は、
香ばしい季節の賑わいを、端正に、はおり、
浮かび上がるみどりに浸る、
眩い光沢を、透き通る声の上に配して。

流れる ....
海が仄かな火を抱いて流れる。
流れは、わたしの新しく柔らかな意匠を溶かして、
かわいた青い夏をひろげる。

みずを失くした海が流す、青い夏は、
白昼の街に横たわり、死者を語り、
練られた風 ....
戯れる森の雫が、
ひとびとの拍手のなかで、静かに横たわる。
あなたの流れる姿が、
森の節目に、厳かに薫り立つ。

標高をあげている森は、
巧みに感度を敷きつめて、
わずかに彩色を動かしな ....
ひかりをふところに浸す、
みどりのまるみが、いのちの数式を
一面につめこんだ、
萌え上がる、眠れる森に、鬱蒼と、
うすきみどりを染め上げて。
満たされた隙間を、みずいろの風が、繰り返し、
 ....
遠ざかる青いカンパスの咆哮が、
夜の鋭い視線に切り裂かれて、
街は、暗闇の静脈を流れるひかりのなかで、
厳かに再生されてゆく。
落下し続ける星座の森が、映し出されている、
高層ビルの滑らかな ....
失踪する雑踏――葬られてゆく錯綜する都会の鼓動が
不整脈を晒している。
失踪する現実――訪れるものは、立ち上がらない
睦言の形骸だろうか。
黒い朝焼けを掴み取るまなざしは、
凍りつく陶酔の血 ....
絶叫する空
描かれている発光する夕暮れの子宮の瞬き。
手を振る少女は、
鮮血の銀河を潤すために海で水浴をする。
薄紅色の尾びれが、激しく水面を叩いて、
青いページは、下半身から、少しずつ、
 ....
たえず流れゆく虚飾で彩られた十字路たちの、
過去の足音が、夜明けのしじまを、
気まずそうに囁いている。
燃え上がる水仙の咲き誇る彼岸は、
すでに、水底の夢の中に葬ってある。
落下する時を ....
わたしは、かつて海水がない渇いた海原で
孤独な一匹の幻魚の姿をしていた時に見た、
色とりどりの絵具をすべて混ぜ合わせたような
漆黒の夕暮れの中で、朦朧として浮き上がる白骨の黄昏と
共鳴していた ....
あの西の空を埋め尽くす枯野に 
鶴の声がきこえる砂漠を描くあなたは
役目を終えた旅人のように 晴れ晴れとして穏やかです
静まりゆくあなたのその瞳をたたえる 夜のみずうみは
いま 爽やかな風 ....
一千本の咲き乱れる桜の木の、舞踏が繰り返される。
そこから溢れ出る、花弁の洪水のあでやかさ。
男は桜のにおいに溺れながら、身をゆだねていった。
何も振り返らずに、ここに来たのかも知れない ....
さらさら/さらさら/さらさら/さらさら
夜がひかりを浴びている。
さらさら/さらさら/さらさら/さらさら
暗闇の空から、月の青い液状の光線がおおう。模様ガラスをすかしてゆがんだ火焔の抽象 ....
満月と星たちが次々と、深い海底に落下して、
水鏡には黒褐色だけが見える。
孤独になった空は雲を身篭って、
粉雪を定まらない海底に落としてゆく。
きのう、海辺の空を眺めて笑っていた僕は、
今日 ....
                    
あなたがいて
華のようなあなたがいて
あなたが動くと、わずかにか ....
朝は最初のひとりが前足を躓くと、慌ただしく、将棋倒しになって過ぎてゆく。落下してゆく。黒子だった冬が前面に出て罵声を上げて、季節の華やかな色を、乱暴に剥がしている。
冬の膨張は、僕の忘却の山 ....
直立する目覚める夜が、黒色の雨で高揚する。
行き場の無い雨の溜まり水を抱えて、
痛みに耐える打ちつけられた岩が、
侵食する季節の皮膚の性をむかえ入れる。――
慌ただしく夜の吐息が反転して、 ....
乱太郎さんの前田ふむふむさんおすすめリスト(56)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
浮遊する夢の形状____デッサン- 前田ふむ ...自由詩28*07-1-24
二つの灯台__デッサン- 前田ふむ ...自由詩20*07-1-11
不寝番—みずの瞑り__デッサン- 前田ふむ ...自由詩28*07-1-3
遠雷—解体されながら- 前田ふむ ...自由詩24*06-12-23
廃船——夜明けのとき__デッサン- 前田ふむ ...自由詩29*06-12-16
永遠のむこうにある空__デッサン- 前田ふむ ...自由詩25*06-11-24
三つの街—浮遊する断片- 前田ふむ ...自由詩18*06-10-24
浄夜——遊戯する断片_デッサン- 前田ふむ ...自由詩18*06-10-9
青い声が聴こえる日___デッサン- 前田ふむ ...自由詩19*06-10-2
ひかりの憧憬- 前田ふむ ...自由詩16*06-9-27
森の経験- 前田ふむ ...自由詩19*06-9-13
青い夏- 前田ふむ ...自由詩15*06-8-8
森の浪漫- 前田ふむ ...自由詩15*06-7-20
森の断章——デッサン- 前田ふむ ...自由詩21*06-7-9
いのちのいる場所- 前田ふむ ...自由詩16+*06-6-16
おもいで——よみがえる記憶- 前田ふむ ...自由詩11*06-5-11
海—春の中で- 前田ふむ ...自由詩12*06-4-23
いのちの情景- 前田ふむ ...自由詩14*06-4-19
かなしみ- 前田ふむ ...自由詩10*06-4-8
子供たちのバラード____デッサン- 前田ふむ ...自由詩10*06-3-30
桜の園- 前田ふむ ...自由詩5*06-3-9
ひかり・ひかる・ひかり- 前田ふむ ...未詩・独白5*06-3-8
いのちの感性- 前田ふむ ...自由詩13*06-3-2
美しい残像________________________- 前田ふむ ...未詩・独白10*06-2-28
冬のひかり- 前田ふむ ...自由詩6*06-2-7
夜の情景- 前田ふむ ...自由詩5*06-2-7

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