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夏バテの深海魚が
歩いている松の木に
君の手が植わっていた
それが非常に涼しく見えている
齧られた世界に
君の唾液が混じっているかと思うと
それだけで明日のことは考えなくて済むし
虫 ....
路面に{ルビ陽炎=かげろう}ゆらめく
真夏の正午
長袖の作業着に
ヘルメットをかぶる
眼鏡のおじさんは
汗水たらし
鉄パイプを{ルビ担=かつ}ぐ
路面には
夏空 ....
お香の煙が立ち昇る
傾き揺れる炎の指さき
すうっとのびて
天をさす
*
{ルビ蝋燭=ろうそく}は
人と似ている
明かりを灯し
身を溶かし
や ....
透明な温度を下げていく
あなたのぬくもり
かすかな光が胸をさす
氷のようなつめたさで
肌が焦げていく
においが鼻につく
電車の中では冷房が
滝のように流れている
さらさらと ....
今日はお祭り
君はもう十六歳
サングリア片手に
夕暮れの会場を歩く
オレンジやレモン、アプリコット
色々入ってる
かわいい歌みたいなお酒
ひとくち
ふたくち
僕にもくれた
....
秒針の刻む音が 目に見えない傷を増やしていく
咳をする度に痛む頭 鏡では見えない残りの日々
敏感な周囲 細心の注意
気配り 気疲れ 気を失って倒れても
自業自得だと 無情な此処の性格
....
梅雨が明けたそうで
なにより
と
街を歩く
と
至る所で
白い携帯電話を手にした人を見た
どれもこれも白一色で
夏空の雲みたいだ
白でなければ
つながらない話があるようで
....
水曜日の4時間目 窓に映る貴女
名前は何というのでせう
クリッとした大きな瞳が印象的なので
「ヒトミ」と 勝手に名付けさせていただきました
しぐさの ひとつひとつに ため息がこぼれます ....
梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る
新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏
種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思 ....
鼻先に突き出してやると
給食の匂いに
ひょいと頭だけを出す
小さくあくびをして
そこでは伸びも出来ないだろう
机の中の猫
小学生の夏、4年目の
算数の教科書を探そうと思ったら
手を ....
ガラス窓が
ごつん、と鳴った
振り向いたら
何かがぶつかって
怪訝そうな顔をした
ガラス窓がいた
蝉が死んだのだ
わたしはそっと拾い上げて
犬にやった
窓の外には
....
明日の夜 君はきっと 僕に似た女の子とキスをする
月の光りに照らされて 綺麗な影が伸びるだろう
僕が嘘をついて 君が嘘をついて
ふたりがうまくいくのなら
良いんじゃないか
....
あなたが教えてくれたうたを
繰り返し うたい続ける
なげだした足にまとわりつく憂鬱は
綿菓子の最期みたいにねっとりして
組み敷かれたうたは
少し雑音が入っていた
無 ....
汚れた雨が蹂躙する街角で
傷をかばいあうために手を繋ぐ
傘を持たない日だけ、どうしようもなく
君の手があたたかくて
切れた指先が痛みを増した
僕の手は
どんな温度で君に ....
低く垂れ込めた
嵐の雲のなかへ
灰緑色の階段が続き
海は大きなちからに
踏みしめられるように
しろく崩れながら
膨らんでは混じり合い海岸線を削ってゆく
風はいっそう強くなり
雨と潮 ....
嵐かぜが激しくて
風鈴の絶え間ない動きは
趣も何もあったもんじゃない
それでも開け放した窓を
騒がしくて仕方ないのに閉められないのは
わたしたちこそこうして
うるさ ....
足元の
蟻は点で
点は繋がって
線になるのなら
わたしたちも線なのだ
けどちぎれたたましいは
そのまま
拗ねたそぶりをして
気を引きたいけど
君が見てるのは
空なの
大きいね ....
あなさびし、
って
三十回言うと
幸せになれるらしいよ
酷く輝いた瞳で言う君に
一抹の不安を抱えた僕は
言わなくていいよ
と
少年のように返した
別に言っても ....
沈丁花から紫陽花まで
わたしの一番すきな春をきりとって
そのひとは去っていった
つぎの春には待ち合わせ
さらさらと
つかみどころのない夏を
どうにかすくいあげて
秋の夕暮 ....
雨の空を見上げて
あなたからの手紙を待つ
何日も何日も
待てども待てどもこない
手紙は連日の雨で
空にとけてしまったかもしれない
そう思って家に帰ると玄関先で
それは静かに待っている
....
決めた!
先に「愛してる」と言ったほうが 勝ちということにしよう!
放出された 夏の、
取り扱いをあやまった空から
束ねられた雨が落下する
世界はまだ、はっきりとした輪郭を持っていて
ぼくも きみも それを知らない
ウィリー、ウィリー、
なぎ倒さ ....
夏が、また―――
怖いですか
あのひとの抜け殻だから
まひるの世界はあまりにも眩しく
夜の世界は、私には暗すぎる
いつからか
瞳が捉える色彩は
こんな風にゆるぎはじめて
....
思いは線で形になる
文字という
不確かな形に
虹のように曖昧な
色とりどりのモールを
くしゃくしゃに丸めて
誰彼かまわず投げ付けていた
文字になりかけた絡まりは
はじかれ
ベ ....
淡いかなしみの曇り空が
堪えきれずになみだを落とすと
紫陽花は青
束の間のひとり、を惜しむわたしは
思わず傘を閉じ
煙る色合いとひとつになりたい
街中の喧騒は
雨の糸に遮ら ....
乾いた灰を
ふるい積もらす
都市の息吹
鋼鉄とガラスの高層ビルの輝き
ターミナル駅の喧騒も
ジーゼルエンジンから吐き出される
車酔いの成分も
灰として積もる
夜の煌びやかな ....
それでは、頂戴いたします。これを
しっくい の如く真っ白くなった 破片を
そっと手の平に乗せられて
魔がさして ぐぐぐぅと
手に力をこめた したらば 瞬時に粉々に ....
夜が、二足歩行で
足早に通り過ぎていく音を
淡い錯覚にくるまりながら、聴いていた
抱きしめあう行為は どこか
呼吸と似ていて、ときどき
わたしたちは声を漏らす
ともすれば ....
渇いたばかりの洗濯物
風に揺れる穏やかな一時
何処までも途切れること無い
日々の流れに時折失望したり
少しでも希望を持ちたくて
君に甘えてみても
特に何も変わらない
....
何もかも 漆黒に 塗り上げて
夜 果てぬ 輝き
紅蓮の焔
暗い 情念 めりめりと
都市の曇天を染め上げ
ほら 暗く 唸る 獣のよう
君と僕
蛍光灯の涼しげな
小さな部屋で
....
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