晩夏の草むらに足を踏み入れると
かわいた空気がひび割れて
よれた、真っ白いシーツが敷かれ
見たことのない男が横たわっている
あばらの上には、何本もの{ルビ径=みち}があり
そのどれもが、わた ....
もうダメなのかもしれませんが…
とりあえずみなさん、これ読んでください。
『詩学』バックナンバーのぼくのお薦めは、伝説の「西脇セミナー」と
いうのがあって、西脇順三郎さんと詩人が集まって、『Am ....
明日のことなんか気にしなくていい
もちろん昨日のことは何ひとつ記憶していなくていい
愛されたければ擦り寄って
肌の隙間に丸くなって
煙いと思えばドアに爪をたてて
合図
部屋を抜け出 ....
菱がたの声が地に灯り
空にも海にも届きながら
誰も呼ばずにまたたいていた
夜の鳥
飛べないのだと
想いたい鳥
水をざくりと斬る光
動かない縦の水紋
熟れた灯 ....
朝、ぼくの季節は二十五歳で
ざらざらとした空を
東から西へ
たとえそれが夢だとしても
渡って、どんなにボタンを押しても押しても/押しても
改行できないでいます
ぼくが、ベーコン ....
霞みの径がいくつかに枝わかれして
闇は星運きに尋ねられるくらい澄んでいたから
夢をどこまで昇れば神さまに会えるのか思いあぐねた
うまれ始めた虹をいくつか過ぎる夢
きのうの歌を唄う夢
大気をよ ....
まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された ....
{ルビ海鳥=うみどり}は
{ルビ淋=さみ}しくないて いますよと
波間のふねを
そよ風が
帰っていって 透きとおり
なき声ひくく羽ばたいて
夕べの斜陽が今朝方に
燃え映ってしゃらしゃ ....
2006年「ライブ寛とふきたのヤーヤードー!」
前座コスモス、ボーカル千葉の雑感
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幼稚園の頃、家の庭に咲いたヒマワリと背比べをした。
母親が庭いじり ....
油をひいたばかりの床に
児らの笑い声が散らばっていたので
つまんで手の平にのせたら
ころころとふるえて弾けた
遠き山に、日は落ちて
白墨を移した袖口に
西日との混濁を見る
小さな胸に ....
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで ....
石を投げたら
海に波紋ができた
ルーツ
無駄にして
深いところに落ちる
波紋を見上げて
できそこないの光に触れる
棒読みの辞書の中に
金字の注釈 ....
―――水脈と暗殺のためのエチュード
{引用=
「水脈」
蛙たちが、並列させられ
陽光を反射しながら追いかけてくる
眉間とこめかみの、土色とゴールドの表皮上で
古い汗は、不規則にぼくら ....
マシュはとなり町の病院で死んだ
マシュが愛した
マシュの本屋では死ななかった
マシュは本屋だった
この町一軒の本屋だった
マシュの店は正方形
そこにふるびた黄色い本
この ....
昨日は忙しい時間に
トイレに座らせたお婆ちゃんの
下ろしきれなかったパンツが
お尻と便座に挟まって
無理に脱がせると
びりり
両手で持ったパンツには
小銭の穴が ....
頬を伝うスペードの影月光浴びて
滝のそばで膨らむぬいぐるみの静けさ
想像上入り組んでいる鯨は筒
生まれ変わる前に貸した三輪車でやって来た
髪を外に垂らす日の夜の長い髪
船 ....
ピアノという家具の冷たさの{ルビ傍=そば}で
あたしのこと忘れたことも忘れる頃にあたしは君を忘れるんだろ
何もかもうまくいかないそんな日々 カレーさえ悲観的な味付け
鈍行の列車の速さでは駄目だと堪らなくなり目を閉じている
....
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
は
なので
しないでください
通りすがりの商店の
入り口の看板
赤い文字のところが脱色して
(何故たいてい赤なんだろう)
黒い文字だけが残った
「葉なので ....
自分の名前を忘れてしまった
お婆さんのお尻を
「よっこらせ」
と抱えながら
車内の椅子に乗せた後
息子の嫁さんが
「これ、ありがとうございました」
と透けたビニール袋を手渡し ....
延滞金さえ払えば帰さなくてもいいですか君 レンタルみたいに
したかった 最初で最後のセックスを 春には里に帰る君と
無人駅 待合室に金の沈黙 止めても君は笑うだけだろ
お ....
体いっぱいに
内臓や肉や骨を詰め込んで
さあ出発だ
横断歩道を渡り
魚の肌を横切り
宇宙ができる以前から咲いている花を
アスファルトに練り込みながら通り過ぎて
コンビニとともに混濁する
....
・
駐車場で暮らす人と知り合いになった
駐車場の
車一台分に四角く区切られたスペースに
うまくお布団を敷いて
机を置いて
入れ替わり立ち替わりする車のヘッドライトを灯りにし
雨が降れ ....
のぞいてごらん、おまえは蓮華畑で興奮している、鼻腔を刺激する春の芳香のなかで、何かを追いかけ、また何かに追われて、ちいさな蓮華の花を踏み潰すたびに熱くなっている、いけないことをし過ぎて気持ち良くなった ....
風をつかむ風の溝から
はがれ落ちる空の白から
鳥の爪跡につづく音
空を少し圧し上げる音
はざまを呑む日
双つの光球
においのまつり
音の粒の日
まぶたのまつり
ひ ....
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた
振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる
今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている
「いつも利用する ....
アスパラガスと中央のそれと
交わる
未分化の炎
わたしはまだ生まれてない
コンクリートを接着剤として
ボルトの取れかかった煙突の下で
黄色いペンキで塗った腕を
ぐるぐる回 ....
黒い顔をした羊のくびすじに
抱きついて
ゆっくり数えている
通り過ぎてゆく星の数がそのままわたしたちのへだたりの時間でもある
シルク
流れていった
じぶんを失ってゆきたい
シルビア、
....
冷たい人ね、と
言われた彼女を
それなら
と、
温めてあげました
優しい人とはほど遠く
弱い人になっていました
おかあさんが
いないそうです
欲しかったものを
手に入れ ....
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