{ルビ錘=つむ}ではなく{ルビ罪=つみ}刺さりし王女
ツェツェ蠅のベルゼブブの興奮した口吻
忘れて 吸われて
導眠の 粉落とす砂男
ヒュプノスとモルフェウスの拮抗
色の呪い は熱い氷
....
さざ波がなみだのように
打ち寄せては 返ってゆく
裸足の少女が想っていると
両の手のひらに
まるい硝子瓶が生まれた
涼風に
前髪を撫ぜられ
足首をくすぐられ
ようやく 頷いて
....
むかしがありました
むかしはいつまでも待っておりました
風は砂時計のように
失ったものをひっくり返し
また失いはじめるのでした
たった一本の
傾いた光の下で
自分を整理整頓したりする ....
手をつなぎ
歩く貴方の右頬に
チュウの衝動
おさえる夕暮れ
机が坂を滑り落ちる
その形状を保ちながら
机が坂を滑り落ちていく
誰に目視されることもなく
他に滑り落ちるもののない坂を
机が机として滑り落ちていくのだ
ああ素晴らしき滑走!
け ....
その階段は
まぎれもなく階段であった
手入れの行き届いた草木
と
光を反射する 白の像
そこは
入り口にも満たなかったのだ
まぎれもない階段の途中
この両目は
....
stage.0素‘イマジン-言葉の起源-’
言葉を捨てよう
言葉の意味から覆そう
言葉は終った
言葉は文字
言葉は積木
言葉は鳥
言葉は空
言葉は表形
言葉は水
言葉は塵
....
未だ硬い、既に確かな
夏でもない、秋でもない、果実で
深緑は
瀕死であることを理解している
見上げれば、ひとつの一秒が
高速で遠のいてゆく
わたしは、何に対しても連 ....
純粋ならざる錬成から生まれ、
おぞましき獣となりて、
いまだ人ならず。
異物、
或いは汚物を喰らい、
蛆と成り果て、
蔑まれようとも。
いつか人と呼ばれる ....
『君はどうしてボクといるの?』
そうあなたが尋ねたから
わたしも尋ねかえしてみたの
あなたが口がうまくないの知ってるから
一生懸命、考えてるあなたがかわいかったから
わた ....
ほんとうに欲しいと思ったんだ
あの夜
だから
ここにいるだけで
しあわせ
夏が終っても
君が胸を泳ぐから
クロール
息つぎをせずに
どこ ....
くるくる変わるきみの表情
「表情」っていうのは言いにくいんだから
笑ってないで僕にキスして
三階のレストランの窓から見下ろした
木造の橋の向こうへ伸びる石畳の道をゆく
白い服を着た君の背中はだんだんと小さくなり
緑の木々の下に消えた
立ち尽くす僕は
次いつ会えるかもわからない
....
おかあさんのところから
はなされた
とおいところにつれていかれた
いっしょにいたひとは
わたしをおいて
どこかにいった
かえりみちがわからない
おなかすいた
みんながい ....
ひとしずく、
ひと掬いの時。
誰も振り返らない。
人しずく、
ひと救いの時。
誰も振り返らない。
ほら、
また落ちた。
....
ねぇ、ここへ来て
僕を抱き締めて
何もかもが怖いんだ
誰もいなくなればいいって
その前に僕だけが消えればって
そう思うんだ
{ルビ零=ゼロ}の間で彷徨ってる僕の
その腕を引き寄せて
....
君の
悲しみが
夏の夕立だったら
いいのに
なんて
ボクは、
無責任で
開けっ放しの
窓際に
飲みかけの
ソーダ水
、と
読みかけの
本が
....
まったくの無意味でできた世界でも
君との出会いに名が欲しい 何故?
それが誰なのか、
記憶を探れば出てくるが、
誰が誰であったか、
この部屋では関係ない。
窓の向こうに手を伸ばそうとも、
扉の向こうに声を掛けようとも、
ひとつも ....
仕事帰りの自転車に乗り
ふらふらと重いペダルをこぐ私を
野球帽をかぶった男の子が追い抜いてゆく
あまりにもまっすぐ走る恐れを知らない背中
暗がりを照らす街灯の立つ角を曲がって消えた
早朝 ....
なかなか
おとこのこであることがやめられない
じぶんが
ばらばらだからかな?
おとこのこの
のこりかすがもえくすぶっている
たぶん
おんなのこがもえるのとは
ちがうにおいがするはずだ
....
あなたが海を歌うとき
わたしの瞳は波になる
愛していたと
告げる言葉が悲しくて
静かに揺れる波になる
あなたが空を歌うとき
わたしの胸は波になる ....
溜まったものの排出先がありますか?
捨ててしまえば二度と目に触れぬ場所がありますか?
出しそびれたゴミ袋で渦高いベランダのように
心に溜め込んでいませんか?
澱んだ空気で身動きがとれぬ ....
上流から下流へ流れる川を工事して
上流に変な生け簀を作ったらしい
わたしが見物に行くとそこには気味の悪い色をした鯰が
腹を見せたりしながら泳いでいる
流れるプールにしか見えないけれど
そこは ....
ふくよかな双丘には
産毛のような若草が萌えていて
双丘を駆け登る風が
君の可愛らしい鼻歌を遠く麓から運んでくる
双丘の頂きから下界を眺めると
みぞおちへ下る急斜面は
真っ逆様に転げ落ち ....
今日も響き渡る騒音
『また始まった』
そぅ深くためいき
目線がわたしに集まる
『もうやめてよね』
でも怒ってにやけてしまぅ
だってね
あの人の騒音は
幸 ....
ただもう一度、 彼と手をつなぎたい。
まぼろしの握手をすれば手の中に土の味するひまわりの種
夏の夜の平均気温が2℃下がり僕は機械の夢を見ました
青空に君が裸で泣いている 機械の僕は近眼のまま
コーヒーを眼鏡の縁で焙煎し3 ....
私の葬式がささやかに執り行われ
友人らが久しぶりに集まった
青空には透明な道が果てしなく続き
新緑に人々の喪服が映えて美しかった
一滴の涙も流されず むしろ
想い出を懐かしむ声で
小さな式 ....
ここで涙を流すともっと崩れてしまう
泣きそうになったら奥歯を食いしばりなさい
昔おばあちゃんが教えてくれた
だから私はいつも奥歯をギリギリ言わしている
ギリギリギリギリギリギリギリ
....
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