巨人になって
谷を飛び越すことがある
足裏に地上の凸凹を感じながら
足首に絡む電線や
田んぼのぬかるみを楽しんだり
街を念入りに踏み潰す
そんな時、人は
わずかな寒気を感じて振り返り
 ....
水面に顔を寄せていくと
無数の鯉が浮かび上がってくる
餌をくれると勘違いしているのか
ぱくぱくと開け閉めする口が異様である
指でも突っ込んでやろうか
でも吸い付かれたら気持ち悪いな
上空の ....
話して 話しつづけて
話しても仕方の無いことを
病院の屋上から見えるもの
遊ぶ犬たちのことや
食べられてしまった飼い兎のこと
売薬の無駄遣いで喧嘩しても すぐにほぐれて
直らない足の痛痺れ ....
 
 
ニュージーランド、アイルランド、ポーランド、フィンランド
すべてのランドが良い所ならいいなあ
世界中の船乗りがそう思っているころ、光雄も例外ではなかった
光雄は数えで十五歳
まだ ....
 
 
お通夜があって
みんな傘を忘れている
窓の外には古くからある市場
誰かの窓にもあるだろう
県管理国道から小道を進み
みんな歩いて進み
本当に歩いているから
誰もが参列者になる ....
もう一年になる。トラックが子供をはねて今もそこに白い花が供えてある。途切れずに誰かが、たぶん遺族だと思うが替えていて、そこだけいつも瑞々しい気配が漂っている。夜暗くても甘い香りがして花が供えられている ....  
 
プラスチックが降り積もる
世界は彩と形に満ち溢れ
ラジオからはいつものように
幸せな物語が流れている

どのように話したらよいのか
君に話したいことがたくさんあるのに
話すべ ....
  
ファミリーレストランで食事をしていると
同じ形をしたファミリーがやって来て
西の方角から順番に着座した
 
ブラザーはシスターに
シスターはマザーに
マザーはファーザーに
それぞ ....
 西の空、山の先がわずかに明かりを残している。周囲のビルの明かりは灯されていた。西の空が青と言えなくもない色から、闇に変わる。エレベーターホールから覗く外の空はすでに夜だった。自動ドアの前まで歩く。ド .... 今日も殺されなった
誰も殺しに来なかった

そう思っているということは
まだ殺されてないということで

今日も殺されなかった

コンセント差さっていない扇風機
ほこりの浮いた麦茶
 ....
あと何年したら自由になれるだろう
この部屋の三角の天井に
ひらかない天窓
こんなはずじゃなかった
あたしが欲しかったのは
青い天にとどく窓

猫の息子が鳴くから
もうすぐ部屋に行 ....
 友人の結婚式で訪れた故郷。山が四方を囲んでいる。幾多の虫の音が聞こえる。駅のホームには人の姿が疎らだった。日焼けをした高校生の男女。運動部の学生だろう。大きなボストンバックに汗をふくためのタオルが、 .... 声をかけた男の肌着は、破れて黒ずんでいる。
手に持ったビニール袋には、アルミ缶がぎっしりと詰まっている。

やあ、おはよう、と男が声をかけると、
湿度の少ない土地の、よく晴れた空は、
やあ、 ....
そろそろ、車は宙に浮いているだろうか、と問いかけられたとしたら、
答えは、いいえ、だ。
かといって、その問いに答えてはならない。
答えは大抵のものを不純にしてしまう。

殺戮者のナイフ。約束 ....
この畑では猿を作るという
春のある朝 まだ暗いうちに
大根のような葉を茂らせた畑から
泡の弾けるがごとき音を出して

猿が飛び出る
猿が土から勢いよく
無言で かつ しかめつらをして
 ....
星が降ったら火傷して
まっ赤になって手を打った

いつも最初にうそついて
きらわれたって構わない

あきらめるのは
らくだった
自分のうえにもう星が
降らないことも
知っていて ....
 
 
下着売り場で羽化したセミたちが
越冬のために南へと渡って行くのを
ぼくらは最後まで見届けた

空の遠いところにある白い一筋の線
あれは飛行機雲じゃない
だって、ほら
指で簡単 ....
 駅前のカフェでサリンジャーの短編小説を読んでいた。ブラインド越しでも西日がきつく、窓を背にする席を選ばなかったことを後悔した。木製のイスも座り心地はよくはない。空調も若干効きすぎている。要するに ....  君が東京につく頃までには、この手紙を書き終えたい。そして君が東京を去るときまでには、この手紙が君の下宿先のポストに入っているようにもしたい。難しくはないんだ。余計なことは書かず、必要最低限だけを .... I want the toys of other boys
I want a knife and a gun and things
But Mom and Dad will not give  ....
最終電車。降車する人の群れ。渋谷駅へ向かうホームの光は消されている。
最終確認をする駅員の姿。

電車から降りる。込み合った車内ではうまく呼吸が出来ない。人の波から外れて、立ち止まり、呼吸をする ....
モーパッサンの短編に『口髭』というのがあって、口髭にある種のフェティッシュを感じる女性が延々と口髭愛を手紙にしたためているという作品なんだけれど、その手紙の結びにある、「最後に――口髭万歳!」という部 .... 老人はジャケットを放り投げる。ブルー
など捨てた、と。階段に腰を下ろす。
確かめる。苦笑う。ブルー
のジャケットは、世界を滅ぼそうとしている。
警察が走る。
知っているほうがよかったんじゃな ....
千歳空港から羽田空港までの約一時間のことだ。下降を始めた飛行機の窓から外をのぞいていた。新木場の臨海公園だろう。夜の街に輝く観覧車が見える。その横は真っ暗な海が広がる。観覧車の光は海をわずかにでも ....  
  
父の見舞いに行くと言って家を出た
船橋までの直通の快速に乗ったのに
途中千葉駅で降りて映画を見た
アメリカのアクションものだった
無責任に人が死んでいくのが嬉しかった
夏の終わ ....
光に閉じ込められた生活が、並んで歩く足音に消える。
思い出したように振り返ると、手が、男の手に触れた。
生まれたのは間違いじゃなかった、と泣きながら繰り返すテレビの声に、同情したのかもしれなかった ....
その日は雨だった
けれど
私は友達二人と老夫婦とで阿佐ヶ谷住宅近くの
うどん屋へ向かった
阿佐ヶ谷の駅までバスで向かい阿佐ヶ谷駅からは
すぎ丸というコミュニティーバスに乗った
すぎ丸の中は ....
 
消防署の隣に
積木で家を造りました

小さな家でしたが
お祝いにひとつ
ほおずきを添えました

出会ったときには
もう家族でした
 
 
僕の頭の上に
女王様が巣をつくった
重みに耐えていると
紅茶の良い香りがする
きっと紅茶を飲んでるんだろう
「まあ、きれい」
きれいなものは誰が見てもきれいだ
僕はずっと
死んだ ....
団地の屋上が、高架橋の上から見えた。冬ばれの日、快い風が背後から吹く。
高架橋は、かつての国道と今の国道をつなぐために、小高い丘を下る。
周囲に広がる田畑は、春にそなえて眠ったままだ。

くわ ....
プテラノドンさんのおすすめリスト(268)
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Storytelling,_Again_2018・9- 春日線香自由詩3*18-9-20
終戦- たもつ自由詩915-8-8
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