なのに
たゆたうように月は光りつづけ
あきもせず夜空を見上げる
あなたの横顔が冷たい
聴こえるはずのない
化鳥の鳴きごえがした
なにかを奪い去る甲高い意志
その悲しみを ....
わたしの 中の 美しい言葉よ
わたしの 中の 憎しみの言葉よ
わたしの 中の 哀切の言葉よ
わたしの 中の 怒りの言葉よ
わたしの 中心 全ての想いを
燦き 輝き 憤って 震えよ
燃え上が ....
くらいくらい 荒野につくりあげた
復讐の塔に閉じこもり
「ひとりだ」と呟いたら
はたかれた
ひたすら 喪いすぎたのだろうね
青い夕暮れに細い声でないてさ
耐えられないわたしを ....
何処にも届かなくていい
誰にも関わらなくて
何の問いもないが
ただ在ることを想う
ダーウィニズムがもたらした
革命にしたがおうとおもう
忙しい自分は本当なのだろうか
ぼくはい ....
お月見
少女は青い服を着て
ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた
姉さんの形見のコーヒーカツプに
月をうかべて
{引用=(二〇一八年九月二十五日)}
....
なにか
白い ものが
のこされて ゐる
うまれたものが
去つた そのあと に
そしてこつちを
みつめてゐる
長い午後に
時が
裏返 ....
道の端に蝉が転がっていた
壁の影にひっそりと
炎天下の中へ這い出て
求愛を啼き叫んだおまえの夏は
一生が、
ここで終わったのか
あなたを思い出にするにはただ時間をかける
....
鳥の船が沖をゆく 夏の朝
雲の峰が溶け やがて海になる
{引用=(二〇一八・八・一〇)}
流れ出た血が固まるように
女は動かない
動かない女の前で暫し時を忘れ
見つめれば やがて
そよ吹く風か 面持ちも緩み
――絵の向こう
高次な世界から
時の流れに移ろい漂う
一瞬の現象で ....
氷の橋、魂は密航する、銀竜草、傾いでいる秋の七草、光る星が何万年前の現象なら、光の中にある私の死体は、すでに、星々の冷めた遠景、氷の橋、猫の舌、竜舌蘭、傾いでいる冬の小路、太陽系を縦走する小惑星の発見 ....
未知へ
タクラマカン砂漠を越えて
間氷期のほそい水系が
稀有のしばりとなるあたり
雪豹の瞳 罅割れて凍る水晶体
天山山脈から崑崙山脈へと
迂回するいのちの循環
毟り取られた緑の草原 ....
夜 小鳥たちは哀しみの巣をつくる
発動機の音がちいさな心臓をふるわせ
人も鳥も水に逃げようとしている
死は同じひろがりで樹下闇を照らし
美しいものの名をわすれていく
冬 かじかんだ指先が ....
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